ピッ、ピッ、ピッ……

目を覚ますと、そこは真っ白な病室だった。

聞こえてくるのは心電図の電子音と、誰かの安らかな寝息。

体を起こしてみるとお姉ちゃん……心音愛羅(こころね あいら)がすぐ脇でベッドに突っ伏して眠っていた。

その横顔には涙の痕が残っていて、僕がさっきまでどれほど危険な状態だったのかが伺い知れる。

とその時、

「お兄ちゃん……⁉ いつ意識が戻ったの……⁉」



病室のドアが開いてイブ……妹の心音真夏(こころね まなつ)が茫然とそこで立ち尽くしていた。

僕はそんな彼女に出来るだけ元気に笑いかける。

「たった今だよ。ごめんね……長い間心配かけちゃって」



真夏は数秒の間口をパクパクさせた後、僕の腕に飛び込んできて涙声を上げた。

「お兄ちゃぁぁぁん! 本当に良かった……私お兄ちゃんが死んじゃったら……死ななくてもずっとこのままだったらどうしようって……!」

「うん……ごめんね」

「どうしてお兄ちゃんが謝るの⁉ 悪いのは信号無視してきた向こうの方なのに……やっとお兄ちゃんの病気が良くなってきて学校に通えるようになった矢先に……何で、どうして世界はこんなにお兄ちゃんをイジメるの⁉」

「僕もずっとそう思っていた。だから再び世界に絶望して、もう二度と目を覚ましたくなくて……そのせいで、お姉ちゃんを付きっ切りで看病させることになってしまった」



そう告げる僕の前で、真夏は悔しそうに歯噛みする。

「私だって……私も学校を休んでずっとお兄ちゃんの側にいたかった! でもお姉ちゃんがそれは自分の役目だからって許してくれなくて……! 元はといえばお兄ちゃんが心を病んだのは、姉である自分の力が足りなかったからだって――」

「シッ、静かに。……あんまり騒いだらお姉ちゃんが起きてしまう」