僕が慌てて答えると、アイラは不意に悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「アハハッ! 真冬ったら本気で焦ってる! 冗談だよ、お姉ちゃんがそんなことに気付かないわけないでしょう?」

「うう……自分の妄想にからかわれるってなんか複雑……」

「――ただの妄想じゃないよ。真冬が今見ているこの世界はね、現実で起こっていることを投影したものなの。その証拠に……ほら」



アイラがようやく僕の上から降りると……仰向けの僕の視界に、空から降り注ぐ無数の雪が飛び込んできた。

その一つがもろに目に入り、僕は飛び起きて慌てて目を擦る。

「わっ冷たっ! お姉ちゃん今わざとやったでしょ⁉」

「んー? 可愛い弟にお姉ちゃんがそんな酷いことするわけないじゃない~」

「あーもうお姉ちゃんといると調子狂わされてばっかりだよ。……イブの時はそんなことなかったのに」

「あーまたイブの話してる! やっぱり真冬は妹萌えなんでしょ⁉」

「だから違うって!」



僕とアイラが言い争っている間にも、雪はどんどん降り積もり、辺りは一気に元の美しい雪原を取り戻していく。

でもそれは決して思い出を凍り付かせるためじゃない。世界砕いて壊してしまう為なんかじゃない。



あるべき幻想をあるべき姿に戻し――そしているべき現実へ帰る為の布石だ。