「真冬……! 開けて……! 早く開けなさい……!」



アイラがドアを乱暴に叩く音。そして激しさを増す外の鈴の音。

それらが互いに共鳴して頭がおかしくなりそうだった。

ドアは木製で僕の部屋にあったものより薄い。アイラは非力な女性とはいえ、このまま叩かれ続けたらすぐに破られてしまいそうだった。

「何かドアを塞げる物を探さないと……!」



必死に目を凝らしながら辺りを見渡すも、部屋にはたくさんのリンゴが入った袋が床に置いてあるだけだった。

せめて箱に入っていれば積み上げてバリケードに出来たが、袋では積んでも簡単に崩されてしまうだろう。

どうすればいいんだ……僕が再びパニックに陥りかけたその時、二度目の雷鳴が轟いた。

その瞬間、物置の燭台に炎が灯って部屋を明るく照らし出す。

「なんだ……⁉」



雷の熱で燭台に火が付いたわけでもない。もしそんなに近くに落ちたら、ログハウスごと僕は消し炭になっていただろう。

理屈はよく分からないが、灯りが付いたことで少し心が落ち着いてきた。パニックの波が徐々に引いていく。

更に幸いなことがもう一つあった。アイラがドアを叩くのをやめたのだ。

さっきも彼女は雷が落ちた時に酷く気が動転していた。きっとアイラは雷が苦手なのだろう。

「今のうちに何かやれることは……!」



僕は明るくなった物置を改めて見渡す。と、窓際の壁に暗かった時は見えなかった文字が刻まれているのを見つけた。どうやら何かの暗号の様だ。



どう考えても怪しい展開だったが、他に活路はない。僕は藁にもすがる思いでその文字を見つめる。