リーン…リーン…。

鳴り響く鈴の旋律で、僕は目を覚ました。

どうやら小さなログハウスのベッドで眠っていた様だ。

起き上がって窓の外を見ると、降りしきる雨の向こうで林に吊るされた無数の鈴が見える。

それらが独特のリズムを刻んで音色を奏でているのだ。

「よく眠れた？」



驚いて反対側を見ると、ベッドの脇の椅子に見知らぬ少女が座っていた。

腰元まで伸びた長い銀髪に、雪の様に透き通る肌。

プロポーションが良いせいで体は小さいのに僕と同じくらいの身長に見える。

服装は白を基調にしたレースのブラウスに水色のスカート。

顔立ちは可愛いというよりは美人系で、全体的に白いせいもあってどこか儚い印象を受けた。

「貴方は……？」

「私はアイラ。イブの様に偽名なんかじゃなくて本名よ」

「イブって誰？」

「あら、それを聞いたらあの子泣いちゃうんじゃないかしら」



そう言って、アイラは悪戯っぽく笑った。

「イブは偽名を名乗らざる得なかった。それがキミの世界における役割だったから。でも、私は何の役割も持たないからありのままの私でいられる」

「ごめん……僕何も覚えてなくて。何があったのか説明してくれる？」

「キミはイブっていう女の子としばらくここで暮らしてたのよ。君が創り上げた幻想の中で。だけど、キミはその世界が気に入らなくなって……イブごと、この世界を破壊した」



それを聞いて――僕の脳裏にひび割れていく白銀の世界がフラッシュバックする。

イブは優しい少女だった。病気のせいで現実世界に疲れ、幻想に逃げ込んだ僕を温かく迎えてくれた。



それなのに僕は……！