今年も春が来た。

「まぁ~こんな長くて綺麗な髪、本当に切っちゃっていいの?」

オネェなことで有名な、男の美容師さんが私の髪を触りながらそう言った。

「はい、髪を切って新しい自分への一歩を踏み出したいんです」

私の大好きな友達が、去年の九月に学校を去った。
噂ではイジメが怖くて他の町に引っ越したとか、夜な夜な遊び歩いてるとか、父親が逮捕されたことで、頭がおかしくなってどこかの病院に入院したとか。
色々なことを言われてるけど、そのどれもを私は信じきれていない。

彼女は私なんかと比べて、強い子だったから。

私は美容師さんの目を、鏡越しに見つめた。
美容師さんは「貴女のその目…強い意思なのね」と言って小さくため息を吐いた。

「もったいないけど、分かったわ。新しい貴女の人生に、ふさわしい髪型にしてあげる!」
「はい、よろしくお願いします」

腕がなるわ~と美容師さんがその手にハサミを握る。
私はそっと目を閉じた。


シャキン……。