友達ドール

「…ん……り……ちゃ…」

頭の奥で、誰かの声がする。

アタシの意識はゆっくりと覚醒していき、目を開いた。

「…理香子ちゃん、大丈夫?」
「…紫織?」
「良かったぁ…昨日、紫織が帰ってきてからずっと眠ってたんだよ?理香子ちゃん…」
「…そう、なんだ…ふふっ…」

もぉ!心配したんだからね~!と頬を膨らませる紫織。

ごめんってば。
そう言ってアタシは笑う。

「今日何日で、今は何時だっけ?」
「んーとねぇ、三十日の午前七時だよ」
「そっか」

昨日、大切な何かがあったような気がする…。
けど、思い出せないから、どうでもいいか。

それより今日のバイトの準備だ。

「紫織、バイトの用意するよ」
「理香子ちゃん…体調大丈夫?バイト、出れそうなの?」
「うん、平気。何だか…ふふ、スゴく気分がいいの」
「そう?無理はしないでね?」
「うん、ほら、着替えよう紫織!」

紫織の手を取り、軽やかな足取りでタンスに向かう。

「理香子ちゃん、今日はご機嫌だねぇ」
「そう?…ふふふ」

紫織の言葉に笑みがこぼれた。
よく寝たからか、頭もスッキリしてる。
薬の量を増やしたからかな。
今日も昨日と同じ量を飲もう。

アタシは着替えてからすぐ、紫織とバイト先に向かった。

途中、担任の先生から電話があったけど、電車の中だったから出られなかった。

まぁ、後でいいよね。

アタシは紫織との会話に戻った。

***


無事に喫茶店のバイトに間に合って仕事が始まる。

朝礼で昨日はすみませんでしたと光さん達に謝った。
皆アタシの体調を気遣ってくれていて心が温かくなるのを感じる。

「私達もフォローするから大丈夫よ、無理しないで、キツかったら言ってね」

光さんの言葉に、アタシはにっこり笑ってこう答えた。

「はい!頑張るのでよろしくお願いします」
「うん、良い返事ね」

光さんもニコリと笑った。


それからアタシは紫織と一緒に、バイト終了の午後三時まできっちりと働ききった。

『お疲れ様でした!』
「はいお疲れ様ー。気をつけて帰ってね」

光さんが手を振りながら見送ってくれた。
アタシ達はそれに応えながら帰路に着く。

「今日の理香子ちゃん、バリバリ働いててカッコ良かった~!」
「ふふ、ありがとう」
「それに今日は笑顔もバッチリだったね~」
「そうだっけ?」

いつもこんな感じじゃない?と首をかしげると紫織はキョトンとした。
けれどすぐに笑顔で「そっかぁ、そうかも」と返した。

「それより今日のまかないも美味しかったね」
「あ、ナポリタンだよね!どうだった?」
「美味しかった。ケチャップたっぷりで」
「だよね~次は何かなぁ」

その後は紫織と、次のまかないの想像をしながら帰った。

明日も早い。
体を休めるために早く寝ることにする。

夜の九時。
布団にもぐる前に、薬を飲む。
カプセルと錠剤を二つずつ。

先生からの電話がまた鳴ってたけど、明日でいいよね。