友達ドール

電車から流れる景色を見る。
辺りは夕焼けのオレンジに包まれていた。
あの後、アタシは篠村さんに五百円を払い、四週間分の飲み薬を貰った。

「それにしてもビックリだよねぇ、あの女の子が『薬を作る能力』を持ってるなんて…」

紫織がアタシの肩に、自分の肩を預けながらそう言った。

アタシは篠村さんの言ったことを思い出す。

『この子は僕の娘でね…僕の診断を元に、その人に合った最善の薬を作る能力があるんだ』

スゴいでしょ、と笑う篠村さんは間違いなく親バカだと思う。
けど、何もない所から突然 薬をポンと出したあの女の子は確かにスゴかった。
アタシは貰った薬を鞄から出す。

『おくすり』と手書きで書かれた文字。
あの女の子が作ったのだろうか。
表には『薬の飲み方』と書かれていて…裏には『注意事項』と書かれている。

『棚野~棚野駅です』

アナウンスが鳴り響き、アタシと紫織は電車を降りた。

***

その夜。
晩ご飯を食べ終えたアタシは薬の袋を開いた。

淡い水色の小さなカプセルと、白の錠剤…。
カプセルが食後で錠剤が睡眠前だった。
どちらも一回一錠。
袋の裏に用法と用量を必ずお守り下さいと書かれている。
アタシはカプセルだけを選び取り、水で飲む。
篠村さんがいうにはカプセルの方は心の傷を塞ぐ効果があるらしい。
錠剤は睡眠薬だとも。

最初から最後までどこかうさんくさかったが、今はそれに頼るしかなかった。
とにかく睡眠をとって、明日からのバイトに備えなくては。

「今日は早く寝よう」
「うん、分かりました~」

時間は夜の九時。
アタシは布団を敷いて、錠剤を服用してから眠りについた。

***

「五百円頂きます…ありがとうございました」

薬を飲み続けて、一週間が経った。
ラストの唐揚げ弁当一個が売れて一息つく。

「紺野ちゃんありがとねー!おかげで全部売り切れたよ~」

店長が店の奥から笑いながらやって来た。
紫織もその後に続いて出てくる。
料理上手な紫織は、最近お弁当の調理や盛り付けを任されることが増えてきた。

「理香子ちゃんお疲れ様でしたぁ~!」
「ん、そっちもね」

パンッとハイタッチしながらお互いをねぎらった。

「理香子ちゃん最近スゴくいい顔してる~…これってお薬の効果が出てるのかなぁ?」

紫織がそっと耳打ちした。

あの薬を服用しだしてから何だか気分がいい。
夜もぐっすりと眠れるようになって、バイト中も頭の回転が早くなった気がする。

「篠村センセーに感謝だねぇ」
「だね」

そんな会話をしながら、アタシ達はその日のバイトを終えた。