友達ドール

「まぁ素晴らしい!もうそのドールのお名前を思いつかれたのですね」

エリスさんが手を叩いて喜んでいる。
アタシは「ち、違う…」と呟いた。

「紫乃は…アタシの…とも―――知り合いの名前で…」

友達、とは言えなかった。
だって、紫乃とはもう友達をやめたのだから。
エリスさんはキョトンとして「そうなのですか?」と言った。

そして、スタスタとドールの元に近づく。
手をドールの顔にかざそうとして―――。
ドールが一瞬、怯えたように体を丸くした。

「な、何する気…!?」

その光景を見て、思わず叫んでいた。

エリスさんはにこりとほほ笑む。

「あらあら、何を…と言われましても。わたくしはこの子に宿した力を返してもらおうとしただけですわ」
「…そうしたら、そのドールは…」
「友達ドールから、元のドールに戻るだけでしてよ」
「…こ、このドールは、嫌がってる…」

アタシはさりげなく、エリスさんとドールの間に割って入った。
ドールはアタシの服の袖をおずおずと掴んでくる。
エリスさんが目をぱちくりさせた。
そして「うふふ」と笑い出す。
今度はアタシが目をぱちくりさせた。

「な、何…?」
「いえ、失礼いたしました…お二人がすっかり仲良しで…わたくし嬉しくて」
「…?…」
「あなた様は…なんというお名前で?」

エリスさんが問いかけ、アタシは戸惑いながらも自分の名前を口にした。

「紺野…理香子様。素敵なお名前ですわ」
「…どうも…」
「理香子様、そのドールはあなた様に差し上げますわ」


…………。


―――え?

口がポカンと開く。

「い、いや、アタシ…今お金なくて…」

こんな魔法のようなドールのことだ。
物凄く高いに違いない―――。
アタシは必死に首を横に振った。

「差し上げる、のです理香子様…お代金は結構ですわ。その代わり、その子に名前をつけ、大切にしてあげて下さいませね」

アタシは背に隠していたドールを見た。
はにかんだように笑っている。

名前をつけて―――大切に…。



「ドールのお名前は、お決まりですか?」

エリスさんが優しくアタシに問いかける。
アタシはドールに向かってゆっくり呟いた。

「あんたの…名前は―――…」



名前を呼ばれ、ドールは頷いた。