その店の中は、外観と同じ色をしていた。
焦げ茶色の長机の上に、人間サイズの人形がディスプレイされている。
人形に近づいて、まじまじと見つめた。
…髪だけじゃなくて肌の質感までリアルだ。
まるで本物の人間みたい…。
「…ホントに…人形なの…?」
「あら、いらっしゃいませ」
「っ…!?」
店の奥から女の人が出てきた。
アタシはその姿に目を見張る。
女の人は豪華なドレスに身を包んでいたから。
中世のヨーロッパ辺りにいそうな格好、というか…足元も隠れるくらい長い丈のフリルがついたドレス。
「ごきげんよう…わたくしはこの店の店長、エリスと申しますわ」
以後、お見知りおきを…。
女の人はドレスの裾を指先で摘まんで、アタシにそう挨拶をする。
「あ、アタシ…その…」
アタシはお客じゃないんです。
そう説明しようとした。
と…その時。
一体の人形に、目を奪われた。
「まぁ、そちらの友達ドールをお気に召されましたのね」
「友達…ドール…?」
聞き慣れない言葉だった。
人形…ドールが友達…?
言葉だけ聞いたら、なんて悲しい響きだろう。
しかしエリスさんがアタシに告げたのは耳を疑うような内容だった。
不思議な力で、本当の人間のように動き、話す特別なドール…。
友達ドールは永遠の友達…けして友達を裏切らない…。
「…そんなの、嘘…でしょ?」
「お疑いでして?…それならば先程あなた様が見ていらしたドールに動いてもらいましょう」
「…え?」
エリスさんがドールに近づいて、指をパチンッと鳴らした。
すると…ドールはゆっくりとその目を開く。
アタシと目が合うと、へにゃりと笑った。
アタシはその場にへたりこむ。
そんな―――
だって、さっきまでのアレは本当にドールだったのに…!
「ご理解頂けましたか?」
視線を動き出したドールに向けたまま…、アタシはゆっくり頷いた。
ドールはアタシに近づくと、もう一度へにゃりと笑った。
そして…。
「こ…こんにちは」
と、可愛らしい声でそう言った。
―――やっぱり、似てる……。
このドールに目を奪われた理由、それは…。
アタシは呟く。
「―――紫乃……」
紫乃に、そっくりだったから。
声はこのドールの方が高いし、髪型もツインテールじゃない…顔だって可愛い作りをしているけど紫乃とは違う―――だけど…。
この子のまとう雰囲気は、紫乃のそれと同じだった。



