友達ドール


次の日。

いつものように家を出た。
公園に着いて、紫乃の姿を探すけれど…見当たらない。
いつもならアタシより早く公園にいて待ってくれているのに。

…連絡しようにも、スマホは鞄の中だ。
そしてその鞄は、昨日教室に置いたまま。
手元にあるのは購買に行くためにとスカートのポケットに入れていた財布と、それとは逆のポケットに入れられた香水のボトルのみ。

「………」

しばらく紫乃が来るのを待ったが、いっこうにその気配はない。
公園の時計を見た。
……そろそろ学校に向かわないと遅刻する。

アタシは学校へと歩みを進めた。

―――もしかしたら、紫乃は先に学校へ行ったのかも知れない。

そんなことを思いながら。


***

学校に着いた。
教室に続くドアを開けた瞬間、クラスメイト達の冷たい視線がアタシに向けられた。

「…何?」

アタシが呟くと、あからさまにそれを無視してそれぞれの会話へと戻っていく。
…コイツら…。
一日ですっかり優衣とアタシの立場が逆転している。

小さく舌打ちして、紫乃の姿を探した。

―――いない。

アタシと一緒で鞄は置いていった筈なので、それで登校しているか判別するのは難しい。
アタシは鞄を持って、トイレに向かった。

幸い、鞄に手出しはされていなかったようで、スマホも無事だった。
持ち物も全てそのまま。
アタシはホッとしながら、紫乃に連絡をとろうと…したところで、チャイムが鳴った。

スマホを直す。
ついでに財布も直し、香水のボトルは…どうしようか悩んだけれど、持っておくことにした。
紫乃が来たら、すぐに返せるように。


アタシは教室へと戻っていった。
冷ややかな視線の中、席につく。

その後教室にやって来た先生から、紫乃は今日、お休みだと告げられる。
どうでもいいが、優衣と白鳥が遅刻しているとも。

二人そろって呑気に遅刻なんて。
いいご身分だと、舌打ちしたいのを必死に堪えた。

昼休みに入った。
先生は盛大に遅刻してきた優衣達を連れて、職員室に行っている。
今頃二人はこっぴどく怒られていることだろう。

そう思えば、少しだけ心が晴れた気がした。

―――そうだ。

昨日、紫乃がくれた香水…使ってみよう。
アタシはスカートのポケットに手を入れた。
これを使って、紫乃の家に行って…感想を伝えてからこう言うんだ。

『香水ありがとう、昨日はごめん』

それなら、勇気が出せる気がした。
素直に言える気がした。

アタシは香水を取り出して教室の奥に置かれた鞄に手を伸ばし―――…た、ところで気づいた。

これ…アタシの鞄じゃない…?

アタシの鞄には一つだけ小さなストラップがついている。
けど、アタシが今手を伸ばしている鞄には、何もついていない………。

それに気づいた時、強く腕を掴まれた。