優は本当に家までついてきてしまった。
こうなればもう覚悟を決めてお母さんに説明するしかない。
でも本当のことは言えないから、騙し騙しで。
事情があって、何日か泊まりにきたと言えばいけるかも知れない。

ガチャリと家の鍵を開けて中に入る。

「ただいま」と言うと、優もそれに続いて「ただいま帰りました」と言った。
リビングからお母さんが顔を出す。

「ちょっと優衣、遅かったじゃな……ん?」

…きた!お母さんの顔が曇る。

「あ、お母さん…この子は優って言って…」
「まぁ優ちゃん!久しぶりねぇ!あらあら、見ない間に大きくなって…おばさんのこと、覚えてる?」
「はい、おば様!勿論覚えてます」
「相変わらず良い子ねぇ!優衣も少しは見習ったら?」
「優衣ちゃんは優しいですよ~!今日も近くを色々案内してくれたんです」
「そうなの?でもここも田舎だからねぇ。何も無かったでしょ?」

……どういうこと?
仲良さそうに話すお母さんと優。その会話は、まるでずっと前から知ってるかのような……。
呆気に取られる私を見て、お母さんが笑った。

「なぁに優衣ったら。そんな顔して」
「お母さん…優を知ってるの?」
「何言ってるのあんたは。エリスさんのところのお嬢さんじゃない!ほら、前にうちの近所に越してきた…あんたと優ちゃんは六年も一緒に遊んでた親友でしょ?全く、今日から一緒に暮らすんだからしっかりしなさいね」
「………え?」
「おば様、優衣ちゃん今日はお友達の掃除当番を代わってあげてて…ちょっと疲れてるみたいなんです、お部屋に行っても…?」

優が小首を傾げてお母さんに聞く。
お母さんは「まぁそうなのね、優衣ってば…優ちゃんもどうぞあがって!自分の家だと思ってくつろいでね。それじゃあ~」と言ってリビングへ戻っていった。
玄関には私と優が残る。

「優衣ちゃん、詳しく説明したいから、取り合えずお部屋に行こう?」
「あ…うん、分かった」

優に言われてようやく私は靴を脱ぎ、部屋への階段を登っていった。

…今、一体何が起こったの?