アタシ達と優衣の立場が逆転したのは、白鳥 優という女が転校してきてから。
優衣と幼馴染みで親友だという白鳥は、転校初日の中休みに、こんなことをアタシ達に向かって言い出した。
「もう二度と、優衣ちゃんをイジメないで」
―――イジメないで?
その言葉を聞き、白鳥を見た。
白鳥はアタシ達が、優衣をイジメていると言ってるの…?
「…り、理香子…」
紫乃が不安そうにアタシを見る。
「…はぁ?何言ってるの白鳥さんてば」
アタシはすぐに反論した。
「うちらは優衣のことイジメたりしてないんだけどー」
アタシ達のしていることは正義。
ヒーローがしていることと一緒なの。
白鳥は悲しそうな顔をする。
「自分がやったことを、イジメだと認識できていないのね…理香子さん…可哀想に…」
呟かれたその言葉に、ふつふつと沸き上がる怒りを感じた。
白鳥はクラスメイトを見渡して告げる。
「ねぇ皆聞いて…?優衣ちゃん二股なんてしてないんだよ…!」
ざわめく教室。
言葉が飛び交う。
…皆の視線が、アタシに向いた。
「ちょっと…!アイツの言葉を信じるの!?」
「…それは……」
「でもさ……」
「―――――っ!!」
瞬間、頭にカッと血が上るのを感じた。
バンッと机を思いきり叩く。
―――そしてその怒りに流されるまま、こんなことを口走ってしまった。
「アタシはイジメてなんかない。てか優衣が二股してるって最初に教えてきたの紫乃だから」
「え…!?」
クラスメイトの視線が、今度は紫乃へと向かう。
紫乃がアタシを見た。
「で、でも…!あのときは―――!」
その先を、紫乃は言えない。
アタシが舌打ちして睨み付けたから。
紫乃は押し黙る。
アタシは教室を出た。
***
スタスタと廊下を進む。
開けられていた窓から風が入ってきて、髪を撫でていく。
「り、理香子…」
紫乃の声がして、後ろを振り返る。
目が、合った。
だけどすぐに、どちらともなく目を反らす。
「あ、のね…さっきは…ごめんね……」
ボソボソと紫乃が呟いた。
「理香子の言ったこと、何も間違ってないのに…私…『あの時は理香子も一緒に見てた』って言おうとした……」
その言葉に、アタシはハッとする。
紫乃はアタシがあの場にいたことを、最後には言わずにいてくれた。
だけどアタシは―――。
自分の言葉を思い出す。
『優衣が二股してるって最初に教えてきたの、紫乃だから』
これでは、紫乃が非難を受けてしまうのではないか―――?
今頃、教室では白鳥の言葉を信じたクラスメイト達が、優衣へ謝っていることだろう。
アイツらは、アタシと紫乃が優衣をイジメていた主犯だと非難してくるに違いない。
中でもそのきっかけとなった優衣の二股現場…。
その光景を『見た』のが、紫乃だとアタシは言ってしまった……。
自分もその現場を紫乃と『見ていた』とは、言えないままで……。



