「パパ!!」
「おぉ、理香子!パパはやったぞ!」

家に入るなりアタシはパパに抱き締められた。
ほんのりお酒の匂いがする…。
チラリと居間を覗くと、缶ビールが数個ちゃぶ台の上に並んでいた。

「今日はお祝いだ!夜はお寿司を取ろうな」

パパがアタシの頭を撫でながら満面の笑顔で言った。

「ぱ…パパ、宝くじ…当たったって…?」

声が震える。
宝くじで…それも五百万円なんて早々当たる物じゃない。
それは本当なのだろうか…?
パパは鞄から年期の入った財布を手に取ると、中から一枚の紙を取り出した。
それをアタシに手渡してくれる。
確かにこれは宝くじだ。
パパが前にも何度か買っていたので、よく覚えている。

「ほら、新聞も買ってきたんだよ」

パパが鞄から新聞紙を出す。
アタシは宝くじの当選番号が書かれた記事を確認した。

………。


―――ある。

確かに当たっている…!

二等…五百万が!!

「じゃ、じゃあ、新しく仕事が見つかったっていうのは…?」

にやける口元を押さえられなかった。
パパは小さな冷蔵庫から缶ビールを取り出してグイッと一気にあおる。

「いつものように大きな会社の清掃をしていた時にな…目の前で女の子が倒れたんだ。お前と変わらない年の子でな、とても顔色が悪く、苦しそうにしていたんだ。パパはすぐに救急車を呼んだよ」

その女の子というのが、パパが清掃をしていた会社の社長の、愛娘だったらしい。
パパの迅速な対応で一命をとりとめた愛娘は、パパのことを自分の父親に話した。
そのことに感動した父親…つまり社長は、パパを自分の会社の社員として迎え入れたいと話してくれたという。
勿論パパは即決した。

「パパは明後日からまた、バリバリ働くぞ!」

夏は間にお盆休みが入るらしいけど、宝くじの五百万円があれば問題なく暮らしていけるとパパが話してくれる。

お金の問題が、一気に解消されてしまった。

「―――おめでとう、パパ!」


―――そして、ありがとう、パパ!

アタシは改めてパパに抱きついた。

これで、転校の話はなくなった。
紫乃のことも、今まで通り…近くで守ってあげられる。

普段は神様なんて信じないアタシ。

だけど今日は、神様に心から感謝をした。