翌日。

紫乃と近くの公園で待ち合わせして、学校へ向かう。
この公園で、昔はよく紫乃と遊んでいた。


「合コン?良いよ、勿論!」
「さすが紫乃」

話をよく分かってくれる子だ。

「あと一人はどうするの?」
「クラスメイトの優衣って子に来てもらう」

紫乃は「そっかぁ」と呟いた後、空を見上げて続けた。

「その優衣ってどんな子?」
「どこにでもいる大人しそうな子」
「…え?大人しそうな子…ってそれじゃ、合コンなんて行かないんじゃない?」

もっともな意見だった。
だけどそこら辺は抜かりがない。

「うん、だから当日まで内緒にして連れてく」

強く意見してくるような子には見えなかった。
合コンの場にさえ連れて行ければ、大丈夫だろう。

「理香子ってば頭良い~!」

紫乃がアタシの腕に絡んでくる。
ツインテールがくすぐったくて、「離れて」と言った。
紫乃はシュンとした様子で「ご、ごめん…」と離れていく。

「…とにかく、今日は紫乃にも優衣と話してもらうから…」
「うん、合コンのことは伏せて、遊びに行こうって提案するんだよね…分かってる、大丈夫だよ」

アタシ達は顔を見合わせて頷いた。

学校の門が近づいてきた。

「ところで……理香子」

紫乃が呟いた。

「手首のシュシュ…忘れたんだよね…?」

紫乃のツインテールが不安気に揺れた。
それを結うのは見慣れたシュシュ。
その言葉に、私はこう返した。

「アンタも外せば?」

いつまでもそんなのつけてるから、ぶりっこなんてバカにされるんだよ。

その言葉は心にしまいこんだ。

***


その日の中休み、優衣に紫乃を紹介した。
アタシとは幼馴染みの親友だって。
紫乃が自慢気に話している。
アタシは二人のそんな様子をなんとなく眺めていた。

「あ、ごめん…ちょっとトイレ」

スマホが鳴り、廊下に出て、教室近くの個室トイレへと入った。

スマホを起動する。

合コンをセッティングしてくれてる筈の菜々花から一件のメッセージが届いていた。

『N高側、OKだって!金持ちそろえてもらた』

そのメッセージに心が引き締まる思いだった。
―――大丈夫、今のところは、順調だ。
アタシは菜々花にありがとうのスタンプを添付した。

『日曜の午前十時頃、駅前にあるカラオケボックスで集合…いいね?』
『後日合コンの詳細よろ!』

そのメッセージに目を細めた。
菜々花は合コンが好きだ。
彼氏がいるのに合コンに参加していた時もある。

「サイテー…」

たった一人の人がいるのに、なぜ合コンに行くのか。
アタシは菜々花みたいな考えに、全く賛同できない。
本来なら中三の時点で友達をやめるつもりだったけれど、パパのことがあり、そうはいかなくなった。
でも…この合コンが終われば菜々花みたいな浮気者の役目は終わる。

だからそれまで、利用させてもらう。
友達のフリをして。

チャイムが鳴る。

アタシは教室に急いだ。