アタシ達は、直ぐ様ヒーロー活動を再開する。
紫乃が受けたイジメはこうだ。
真冬に水をかけられ、持ち物を様々な場所へ捨てられ、机に暴言を書かれて…掃除当番を押し付けられる。
それを聞いたことで、紫乃が中休みや昼休みにアタシの元へ来なかった理由が分かった。
中休みは捨てられた持ち物を探していたから。
そして昼休みは給食後の掃除当番を一人でこなしていたから。
「アンタ、何で言わないの…」
「だって理香子、他の子と楽しそうにしてて…言えなかったの…」
「…アタシのせいだって?」
「ち、違うよ!違う!そんなことない!」
紫乃がツインテールをぶんぶん振り回しながら首を振った。
私は紫乃の手を取る。
「り…理香子?」
「行くよ」
「え!?ど…どこに…」
私は後ろで戸惑う紫乃を振り返り、嘆息しながら言った。
「アタシの家…で、作戦会議」
紫乃のことは、アタシが守ってあげなくちゃ。
***
全ての制裁が完了したのは三年生の時。
紫乃をイジメていたリーダー格の女子が意外にしぶとく、中々謝ろうとしなかったのだ。
結局、制裁を続けた結果。
その女子は心を崩して登校できなくなり、制裁もそこでおしまいとなった。
紫乃と二人、廊下を歩く。
前を歩く生徒達が、皆アタシ達を見て恐れおののき道を開けていった。
あいつらに関わると何をされるか分からない。
あいつらの前で誰かをイジメると、それが何倍にもなって返ってくる…。
そんな言葉が校内に溢れていた。
しかし、アタシ達に向けられたのは恐怖の視線だけではない。
一部の生徒…主にイジメられていた地味な女子や男子からはすっかりヒーロー扱いだった。
「私達はヒーローだもんね、理香子」
紫乃が笑う。
―――そうよね、紫乃。
アタシ達が弱い奴らを守ってあげなきゃ。
悪い奴らは全員こらしめるの。
だってアタシ達は…アタシはヒーローなんだから。
紫乃を守れるのは、アタシだけなんだから。
それを今年、私は再確認した。