「さて、名前を決めていただきましたので、次のご説明をさせていただきますわ。友達ドールについてです」

エリスさんが黒板に白のチョークで文字を書いていく。
その光景を私達は二人で、手を繋ぎながら見守っていた。

「友達ドールの特徴その一、友達ドールは成長いたします。人と同じように成長し、やがて老人となりますが、亡くなった後は元の人形に戻りますわ」
「そうなんだ…」
「だから私は、死ぬまで優衣ちゃんの友達でいられるの」
「でも、いつかは死んじゃうんだね…」
「ずっと先のお話よ」
「そっか、そうだね」

二人で微笑みあう。繋いだ手が、温かい。
この子は間違いなく生きている。
エリスさんがにこりと笑う。

「友達ドールの特徴その二、友達ドールの死期は優衣様次第で変わる」
「え!?」
私次第で…この子の死期が決まる…!?
どういうこと……。
私がエリスさんを見ると、エリスさんはこう続けた。

「そちらにいる友達ドールはあなた様の永遠の友達…。彼女はあなたを、けしてお一人にはさせません。不幸はいつも一人でいるときに起こるもの……でも、誰かが側にいればどうでしょう?最悪な未来を変えられるかもしれない…それは死さえ同じこと。あなたが死ぬ時、それがこの子の死ぬ時なのです」
「私は優衣ちゃんと運命共同体なの。いつでも一緒に死ぬ覚悟があるわ。私は絶対、優衣ちゃんを一人で寂しく死なせたりしない」

勿論、優衣ちゃんが長生きしてくれれば、私も長生きするからね。そう言って、約束よ、と小指を差し出される。
「うん、約束…!」私も笑って小指を絡めた。

「それではその三、参ります。友達ドールには一人一人に性格が振り分けられております。その子の性格は優しい…これは周囲の人間…優衣様以外にも優しい性格なのですが、それが嫌になった場合、優衣様のご希望で変えることもできますわ」
「例えば…?」
「口に出して言えば良いのですよ。自分だけと仲良くして!他の子とは口をきかないで!…と言えば、その子はその通りに動きます。あなた以外の者を除外するのです。友達ドールはいつだってあなた様を、あなた様のお心を大切にするのですわ」
「そ…そう、なの?」
「えぇ、勿論。優衣ちゃん以外の人間なんて、どうでもいいの。だから何でも言ってね」
「……うん!」

チラ、とエリスさんが窓の外を見た。すっかり辺りは暗くなっている。

「…おおよその説明は以上ですわ優衣様。何かご不明な点がございましたら、お手数ですがまたお店にいらっしゃって下さいませ。その子の生活はこちらで全て面倒を見ますので、何もご心配はございません。――それでは優衣様」

さようなら。本日はご静聴、誠にありがとうございました。

そうしてエリスさんは教室のドアから去っていった。

私は私の友達ドールに向き合う。
そして口を開き、つけたばかりの名を呼んだ。

「――これからよろしくね、優」
「此方こそよろしくね、優衣ちゃん」

優が優しくほほ笑んだ。
その手はしっかり握られている。