友達ドール

授業中、理香子は上機嫌で先生の話を聞いていた。

中休み、理香子はスマホを見つめて鼻歌を歌っていた。

そしてお昼休み、理香子は席を立つと、楽し気に教室を後にしていた。

「何あれ…」
「暑さで頭おかしくなったんじゃね?」
「気味悪い…早く転校してくんないかな…」

ひそひそとクラスの子達がそんな会話をしている。
蒸し暑い窓側の席。
私はそれを盗み聞きしながら、お弁当箱の中の冷凍カボチャコロッケに箸を突き刺した。
…ようやく雲が出てきて、窓越しにジリジリと照りつける陽射しが和らいだ。

「優は…理香子の様子を見てどう思う?」
「私?特に、何とも」
「あ…そっか」

優は私のお願いを…理香子と紫乃に関わらないでというお願いをまだ守ってくれているんだ。
私はカボチャコロッケを口に放り込んだ。

理香子が教室に来た代わりに、今日は紫乃が学校を休んでいた。
そういえば…登校日も二人は休んでいたとクラスの子に聞いた。
―――二人の間に何かあったのだろうか。


……………。

そこまで考えて、首を振った。

私には関係ないことだ。
あの二人のことなんて。

何気なく窓の外を見た。

校門の前に、誰かがいる―――。
そこに駆け寄る一人の生徒…あれは―――。

「優衣ちゃん?」

優に声をかけられてハッと我に帰る。

「また、気分悪い?大丈夫?」
「あ…ううん、大丈夫だよ」
「それならいいんだけど…」

優はまだ心配そうに此方を見ていた。
―――そして。



「…永野君のこと、辛いなら…忘れる?」



一瞬、頭が理解ができずに私は箸を床に落としてしまった。


***


帰りのホームルームが終わると同時に、二人分の鞄を肩にかけて、優の手を掴み教室を飛び出す。

廊下を走らないの!とおばさん先生に怒られても、私の足は止まらなかった。
学校を出る。
そして前に私と優と紫乃で行ったカフェに入った。

席に着き、注文もそこそこに本題を切り出す。

「優―――!お昼休みに言ってた、永野君を忘れる方法って!?」

私の大きな声に、店にいた人達が一斉に振り向く。
私は「す、すみません…」と謝ってから、再び前に座る優の返事を待った。

「うん、あのね…エリス様にお願いしてみるのはどうかなって」
「…エリス、さん…に?」
「優衣ちゃん覚えてない?エリス様のお力のこと―――…」
「あ……そっか!」

私は思い出す。
優が初めてお母さんと会った時のことを。
その日の夜、優から聞いたエリスさんの不思議な能力のことを―――。


記憶を、塗り替える能力―――!

確かにエリスさんなら、永野君を殺したという記憶を塗り替えてくれるかもしれない…!

「で、でも…エリスさんに会うには夢の中に行かないと―――」
「実は、ね…友達ドールのお店は、現実に存在しているのよ」
「…え?」

それは衝撃的な言葉だった。
友達ドールのお店は…現実に存在する…?
夢の中に行かないと、その場所には行けないんじゃなかったの…?

優は語ってくれた。


友達ドール…そのお店の実態を。