友達ドール


楽しかった夏休みはあっという間に終わり、新学期が始まった。
久しぶりに夏の制服へ手を通した私は身だしなみを整える。
途中登校日があったけれど、風邪を引いたと嘘をつき、優と二人でずる休みしたから本当に制服を着るのは久しぶりだ。

優がピンク色の櫛で私の髪をといてくれる。


……あの花火大会の翌日、川西先生から連絡があった。

永野君が行方不明になったと。

優が電話に対応して、『永野君とは花火大会で別れたきり、会っていません』と先生に伝えていた。

「優衣ちゃん、終わったよ~」

優が私の髪を撫でた。
リビングに向かう。
お母さんがエプロンを着けて、目玉焼きを焼いてくれていた。
いい匂いが鼻をくすぐる。
半熟にしてね、というとお母さんは一言「分かってる」と告げた。

「行方不明の子、早く見つかればいいわね…」

朝食を半分食べ終えた時、お母さんが心配そうに呟いた。
瞬間、頭の中に永野君を殺した時のことがフラッシュバックして、私は口を押さえた。
優が気づき、大丈夫?と私の背中を撫でてくれる。

「…やだ、どうしたの優衣!…気分悪い?吐きそう?」
「だ、大丈夫―――ちょっと一気に食べすぎたみたい…」
「もう、ゆっくり食べなさいよ?」
「うん…ありがとうお母さん、優も…」

隣を見ると優がニコ、とほほ笑んだ。

永野君を殺した時のことを、こうしてたまに思い出すことがある。
でも、その度にこうして吐き気をもよおしていたら、確実にいつか疑われる…。
学校に行けば、話題は永野君のことで持ちきりだろう。


―――どうしよう?


考えてみたが、とにかく今は気を引き締めて、必死に演技するしかないという決断になった。

大丈夫。いつか忘れられる…。


私は残っていた目玉焼きを箸でつついた。