「……え……?」
永野君の体をどかして、ヨロヨロと立ち上がる…そこにいたのは…。
「優衣ちゃん大丈夫!?」
「ゆ、優…!!?」
倒れていた筈の優が、大きな石を持って立っていた。
優は私に駆け寄り、永野君から離れるように言った。
私は言われた通りに気絶したままの永野君から距離を取る。
「ゆ、優…いつから起きてたの…?」
「ついさっきね…ビックリしたわ、優衣ちゃんと永野君が掴み合いの取っ組みあいしてるんだもの…」
優が震えながらそう言った。
そうだ、優に教えなきゃ!
永野君のことを!
彼が危険人物だということを!
「ゆ、優!永野君は悪い人なの!」
「え?」
「優のことを気絶させて、乱暴しようとしてたの!人殺しもしてて、優の下駄箱に子猫の死体を入れたのも永野君で―――!」
「落ち着いて、優衣ちゃん…!」
優が私の肩を抱いて落ち着けようとする。
だけど私の言葉は止まらない。
永野君が目を覚ます前に、伝えないと!
「永野君は知ってたの、優が友達ドールだってことを!」
「―――え?」
「それで優のことを都合のいいオモチャにしようとしてて、私それを止めようとして―――」
「…うん、分かったよ、優衣ちゃん」
「…ゆ、優…?」
優はにこりとほほ笑んでいる。
「う…うぐぅ……!」
「!!」
永野君が目を覚ました…!
まだ倒れたまま頭をさすっている…優に殴られた箇所がまだ痛むのだろう。
「優、逃げよう―――!」
優の手を取って裏山を降りようとする、が。
「待って、優衣ちゃん」
優がそれを立ち止まって阻止した。
私は驚いて優を見た。
優はくるりと後ろを向くと、永野君の元へと歩いていく。
「ゆ―――」
優の名前を呼ぼうとして、私が手を伸ばした時―――。
ゴッ!!
再び、大きな音がした。
優が、持ったままの石で、永野君を殴ったのだ。
バタリ、と。
その場に倒れ伏す永野君。
一瞬の静寂がこの場を支配した。
「優…!何やって…!?」
優は私を振り返ると、不思議そうな顔をした。
「何って…私のこと、知られたんだよね?」
「そう、だけど…」
「もしも私がドールだって誰かにバラされたら、優衣ちゃんと一緒にいられなくなるかもでしょう?だったら…その前に何とかする」
優衣ちゃんはそこで見てて…と優は呟く。
そして優は永野君に近づくと、その首を思いきり両手で締めあげた。
優は、永野君を殺そうとしているんだ。
永野君が苦しそうに呻く。
ガリガリと地面の泥を爪で引っ掻いていた。
優は無表情だ。
私はその場で見守ることしかできなかった。



