時はゆっくりと過ぎていき、放課後。
私はまだ学校にいた。
理香子と紫乃に掃除当番を押し付けられたからだ。他の当番も理香子達に便乗して先に帰ってしまったから、私は一人で掃除をしている。
サッサッサッ……。
ホウキで理香子と紫乃が落としたスナック菓子を集めていく。休み時間に二人が食べこぼしていたお菓子のクズを、どうして無関係の私が掃除しなきゃいけないんだろう。
悔しい、悔しい…悔しい…。
ゴミがようやく一ヶ所に集まった。
ため息をつき、ちり取りを持ってこようと後ろを振り返ると……女の子がいた。
「っ!!……え、えっと…」
一瞬身構えたが、クラスの子ではない。と、いうよりこの学校では見たことのない顔だった。
何より女の子は制服を来ていない。黒いパーカーに七分丈のデニム、靴は来客用の見覚えある深緑のスリッパを履いていた。
見たことのない顔――?
ふと、そこが引っ掛かった。そんなわけ……。
いや、でも、あの綺麗な黒髪も、同じくらい黒くて大きな目も…どこかで見たような……。
どこで―――――?
「これ、かな?」
「え?」
女の子がおずおずと差し出したのは、ちり取りだった。
白魚のような綺麗な手が、薄汚れたちり取りを持っている。私は急いでそれを受け取った。
その瞬間、女の子と目があって弾かれたようにうつ向いた。
か、可愛い…!なんて美少女なんだろう…!
「あ、ありがとう…ございます」
「ふふ、敬語なんていいよ、優衣ちゃん」
「……え、何で…私の名前を……?」
「あらだって、わたくしのお店に、来てくださったでしょう?横手 優衣様」
突然声がして、ドアの方を向く。
そこにはまるで、絵画の世界から飛び出したような、フリフリの淡いミントグリーンのドレスを纏ったお姉さんがいた。
目の前の女の子より白い肌に、蒼い目、ぷるんとした小さく張りのある唇。綺麗な金髪はうっすらウェーブがかかっている。
「…お、店……?」
「はい、横手 優衣様。確かにご来店いただきましたわ…昨夜の夢の中で」
昨夜…の、夢の中で………あ、あぁ!
私は驚愕する!
「うふふ、思い出されたようですわね」
「も、もしかして、友達ドール店の……」
「そうですわ、昨夜は留守にしていて申し訳ございませんでした…わたくしが書き置きを残した、店長のエリスと申します」
緩やかな動作でドレスの端を掴み、片足を後ろに組んで挨拶するエリスさん。
私は女の子を見つめた。
そうだ、思い出した!この子の顔の特徴は、昨夜の夢の中で、私が選んだドールと同じなんだ…!
「ほ、本当に…あなたは友達ドール、なの?」
私の…私だけの…。そう続けると、女の子ははにかむように笑い、こくりと頷いた。
なんて綺麗な笑顔なんだろう…心が清んでいくような気分だ。
「な、名前…この子の、名前は…?」
店長…エリスさんに聞いてみる。
エリスさんは此方へ歩いて来ると、女の子の肩を抱き寄せた。
「この子の名前はまだございませんわ。先程友達ドールとして目を覚ましたばかりの…赤ちゃんのようなものですので。優衣様がお決めになって下さいませ」
「わ、私が…?」
チラリと女の子を…私の友達ドールを見る。
彼女は優しい眼差しで私の言葉を待っていた。
「じゃあ……あなたの名前は―――」
私はまだ学校にいた。
理香子と紫乃に掃除当番を押し付けられたからだ。他の当番も理香子達に便乗して先に帰ってしまったから、私は一人で掃除をしている。
サッサッサッ……。
ホウキで理香子と紫乃が落としたスナック菓子を集めていく。休み時間に二人が食べこぼしていたお菓子のクズを、どうして無関係の私が掃除しなきゃいけないんだろう。
悔しい、悔しい…悔しい…。
ゴミがようやく一ヶ所に集まった。
ため息をつき、ちり取りを持ってこようと後ろを振り返ると……女の子がいた。
「っ!!……え、えっと…」
一瞬身構えたが、クラスの子ではない。と、いうよりこの学校では見たことのない顔だった。
何より女の子は制服を来ていない。黒いパーカーに七分丈のデニム、靴は来客用の見覚えある深緑のスリッパを履いていた。
見たことのない顔――?
ふと、そこが引っ掛かった。そんなわけ……。
いや、でも、あの綺麗な黒髪も、同じくらい黒くて大きな目も…どこかで見たような……。
どこで―――――?
「これ、かな?」
「え?」
女の子がおずおずと差し出したのは、ちり取りだった。
白魚のような綺麗な手が、薄汚れたちり取りを持っている。私は急いでそれを受け取った。
その瞬間、女の子と目があって弾かれたようにうつ向いた。
か、可愛い…!なんて美少女なんだろう…!
「あ、ありがとう…ございます」
「ふふ、敬語なんていいよ、優衣ちゃん」
「……え、何で…私の名前を……?」
「あらだって、わたくしのお店に、来てくださったでしょう?横手 優衣様」
突然声がして、ドアの方を向く。
そこにはまるで、絵画の世界から飛び出したような、フリフリの淡いミントグリーンのドレスを纏ったお姉さんがいた。
目の前の女の子より白い肌に、蒼い目、ぷるんとした小さく張りのある唇。綺麗な金髪はうっすらウェーブがかかっている。
「…お、店……?」
「はい、横手 優衣様。確かにご来店いただきましたわ…昨夜の夢の中で」
昨夜…の、夢の中で………あ、あぁ!
私は驚愕する!
「うふふ、思い出されたようですわね」
「も、もしかして、友達ドール店の……」
「そうですわ、昨夜は留守にしていて申し訳ございませんでした…わたくしが書き置きを残した、店長のエリスと申します」
緩やかな動作でドレスの端を掴み、片足を後ろに組んで挨拶するエリスさん。
私は女の子を見つめた。
そうだ、思い出した!この子の顔の特徴は、昨夜の夢の中で、私が選んだドールと同じなんだ…!
「ほ、本当に…あなたは友達ドール、なの?」
私の…私だけの…。そう続けると、女の子ははにかむように笑い、こくりと頷いた。
なんて綺麗な笑顔なんだろう…心が清んでいくような気分だ。
「な、名前…この子の、名前は…?」
店長…エリスさんに聞いてみる。
エリスさんは此方へ歩いて来ると、女の子の肩を抱き寄せた。
「この子の名前はまだございませんわ。先程友達ドールとして目を覚ましたばかりの…赤ちゃんのようなものですので。優衣様がお決めになって下さいませ」
「わ、私が…?」
チラリと女の子を…私の友達ドールを見る。
彼女は優しい眼差しで私の言葉を待っていた。
「じゃあ……あなたの名前は―――」



