友達ドール

「試しに一度殺してみたいんだけど、絶対血まみれになるだろ?そんなん萎えるじゃん?ならその前に犯した方がいいかなって…」
「そ、そんなことさせない!」
「横手の意見は関係ないよ。…いつもいつも白鳥にくっついてまわりやがって…おかげで何ヵ月も待つことになっただろ」

永野君がスタンガンを私に向けて構える。

「イラついたから、飲み物に下剤混ぜたりして白鳥と離そうとしたのに、それも失敗するしさ」
「!…あの時の、永野君の仕業だったの!?」
「あれ、今知ったんだ?」

馬鹿にしたように鼻で笑う永野君。
それを見て私の中に悔しさが込み上げてきた。
永野君が買ってきたあのタピオカミルクティー…。
あれに下剤が入っていたから私は腹痛を起こしたんだ…!

「―――!…まさか…」

ふと、あることが頭をよぎった。

永野君は動物を虐待して殺したことがある……それじゃあもしかして―――!

「優の下駄箱に、子猫の死体を入れたのも永野君なの…!?」

私が叫ぶ。
永野君が「おぉ!」と歓声をあげた。

「よく分かったな横手!そう、それも俺」
「…な、んでそんなことを…!」
「いつも可愛い白鳥の、歪んだ顔を見たかった…から?」

俺、白鳥のこと気に入ってんだよ。ほら、白鳥って可愛いじゃん。だからプレゼントをしたんだ。その顔が恐怖に、悲しみに…苦痛に歪んだら、きっともっと白鳥を好きになれる―――そう思ったんだ。

そんな言葉を並べながら一歩ずつ、永野君は私へと歩みを進めてくる。

ゆ…歪んでる。
全ての感情や行動が歪みきっている…!

「それじゃ今度こそ、横手…おやすみ」

タタッと此方へ走り寄る永野君…!
突き出されたスタンガンをかろうじてかわす。
そのまま優のいる方へ体を向けようとして―――。

「きゃ!?」
「逃がさねーよ」

髪の毛をわしづかみにされ、近くの木に投げつけられる。
思いきり体が木に打ち付けられてじわりと痛みが広がった。
直ぐ様立ち上がろうとするが、泥に足をとられてコテンッとその場で尻餅をつく。
目の前に、永野君がいた。
スタンガンがバチバチと火花を散らしている。

私は永野君を睨み付ける。
私が気を失えば、優が酷い目に合わされる!
私が優を守らなきゃ―――!

私は近くに落ちていた、長い木の枝を振り回した!

「っ…!この!」

永野君が腕で木の枝をガードする。
スタンガンの音が消えた。
どうやらスイッチから手が離れたようだ。
それを私は見逃さない…!

「ぐっ―――!?」

永野君に向かって思いきり体当たりした。
よろけて後ろへと倒れる永野君…体当たりした私も一緒に倒れこんだ。

しまった―――!
この距離じゃスタンガンを当てられてしまう!

永野君が笑みを浮かべた。
私は咄嗟に永野君の腕を押さえつける!
スタンガンを奪い取るんだ―――!!

「離せ!横手!」
「あんたこそ!それを離してよ!」

上に下に…体制を変え、ぐるぐると転がりながら掴み合いの応戦をする。
泥まみれの浴衣がはだけて下着がチラチラと見えていたけど、それすら気にする余裕はない…!
永野君がスタンガンを首元に当てようとする!
けれど私は永野君の手首を掴んでそれを阻止した…!

だけど、男女の力の差はどうにもできない…!
永野君が勝ち誇った顔でスタンガンを持つ力を強めた―――!

じわりじわりとスタンガンの火花が首元に近づいてくる―――!


もう、だめ―――!!


そう思った時だった。



ガンッ!!


大きな音がして、永野君が力なく倒れた。