友達ドール

浴衣が乱れるのもお構いなしに、獣道を駆け上がっていく。
運動不足だった体にこの上り坂はキツい…だけど、早く優と永野君を見つけなきゃ―――!

薄暗い裏山の道…前に子猫を埋めた場所が見えてくる。
あの光溢れる場所にポツンと立つ桜の木。
そこを通りすぎれば、数分で青谷さんに声をかけられた入り口まで戻れる。
このままそこまで走りきれば―――!


―――ふと、私はあるものを見つけて立ち止まった。

これは……熊のぬいぐるみ……?

その場にしゃがみこみ、手のひらサイズの茶色い小さな熊のぬいぐるみを手に取った。
どこかで…見たことがあるような……?

私は必死に頭を回転させる。


…そうだ、確か射的の景品で…


―――優が、永野君から貰っていた熊だ!


私は辺りを見渡す。
優はここに来ていたんだ…でも何で裏山に?
永野君は…?


「ゆ、優―――!どこ!?どこにいるの!?」

叫びながら周辺を探す。
だけど、見つからない…!
私の心に焦りだけが広がる。


「闇雲に探してちゃダメだ…!考えなきゃ…」


優の持ち物が落ちていた。
優がこの裏山にいるのは多分、間違いない。
でも優が、一人でこんなところに来るだろうか…?
反対方向にある二つの入り口を繋ぐ裏山…そのことを優は知らない筈だ。

―――優は?

なら…永野君はどうだろう…?
私が知ってるくらいだから永野君も知ってるんじゃないか…?


「もしも…永野君がそのことを知っていたら…優をここまで連れ出せるかもしれない…!」


連れ出すための口実は、はぐれた私達を探すため、でも合流場所に心当たりがある、でも何でもいい。


「…だと、したら…何で永野君はこんな所に優を連れてきたの…?」

告白なら、まずは近くの浜辺に行くのではないだろうか。
けれど二人とはぐれた場所から察するに、浜辺とは逆の方向だと思う。

浜辺に行く道は、私が青谷さんと別れたあの入り口からの方が圧倒的に近いのだ。
もう片方の、四人が合流した入り口から浜辺に行こうとすればどうしても時間かかる。
道が狭く、いりくんだ作りになっているからだ。

「裏山…高い場所で、花火を見ながら告白するつもり…?」

いや、それもない。
この裏山はどこも木々が生い茂っていて、花火なんてほんの少ししか見えない筈だ…。

…むしろこの先に行けば行くほど暗く、人気もなくなって――――――……。


そこまで考えて、再び走り出す。

もし、もしも永野君の狙いがまさしく『人気のない場所に優を連れていく』ことだとしたら?


優が危ない!


私の本能が告げていた。
飛び出ている木の枝を手で払いのけながら走る。


「―――っ!!?」




―――前方に、人影が見えた。