友達ドール

花火大会当日。
時刻は午後六時を指していた。

「優…!本当に浴衣でいくの?」
「えぇ、せっかく優衣ちゃんのお母様が用意してくれたんだもの…大丈夫、汚したりしないから」
「それはいいんだけど…歩きにくいと思うよ」

だって…と部屋の窓を見た。
傘を差すほどではないが、小雨がパラパラと降っている。
今日の朝方までは強く降っていたことを考えると、浴衣で行くのはどうなんだろう…。
コンクリート地面の縁日を歩くのはともかく、神社の方に行けば階段もあるし、その付近の裏山などの土はもう泥と化している筈だ。
浴衣に下駄では絶対歩きにくい。

「ね、優衣ちゃんお願い!お揃いの浴衣、着ていきましょう?」

懇願する優に、ついに負けてしまった私は浴衣を手に取った。
白地に青と白の花が咲いている浴衣だ。
この日、花火大会に行くだろうと踏んだお母さんが、私と優のために買ってくれていたものだった。
ちなみに優の着ている浴衣は私と色違いで、黒地に赤と黒の花が咲いていた。

―――これも、お揃いか。

そう気づくと、浴衣も良いかもと思えた。
お揃いの浴衣で花火大会なんて、記念になる。
優が手際よく浴衣を着付けてくれて、私達は花火大会へと向かったのだった。


***


花火大会の会場に近づくにつれ、人が多くなってきた。
その殆どが親子連れや恋人だ。
私ははぐれないようにと優の手を握った。

「どこに行こうか、優?」
「あ、私行きたいところがあって―――」

優がそう言いかけた時だった。

「あれー?優衣と白鳥さんじゃん!」

声のする方にいたのは同じクラスの女子。
確か…青谷さん。
青谷さんは私達に近寄ると浴衣を見て「可愛い~!」と声をあげた。

「いいなぁ浴衣!しかもお揃いじゃん!私も浴衣着てくれば良かったかな~」

傘を差した青谷さんの服装はTシャツにジーパンというラフな物だった。

「ありがとう青谷さん…今日はお一人?」

優が聞くと、青谷さんは「いや?」と首を横に振った。
もう一人来る予定だと笑う青谷さん。
その人からお願いされて、お祭りに来たんだと説明される。

「お、来た来た…おーい!」

ふと、私達の後ろに向かって手を振る青谷さん…振り返ると、そこには―――。

私は口をポカンと開けた。

「…永野君…」

そこにいたのは黒いポロシャツに黒のジーンズを合わせた永野君。
此方へ駆け寄ると彼も驚いたように目を丸くしていた。

「白鳥と横手…!お前らも来たんだ?」
「まぁ、永野君!偶然って続くのね」

―――偶然。

やはりこの言葉が頭に引っ掛かった。
夏休みの前日、三人で帰ったあの日、私達が花火大会に行くことを永野君は知っていた筈だ。

…もしかして優と会うために…?

…いや、でも今日、永野君は青谷さんと約束してたんだ。
そんなわけないか…。
きっと私の考えすぎだろう。

「ね、どうせだし皆で回ろ!」
「それいいな!」

青谷さんの提案に永野君が賛同する。

私達は四人で縁日を回ることになった。