もう制服は来ていたので、鏡の前で軽く髪だけ櫛でとき、そのまま部屋を出る。
身だしなみは整えても駄目だ。どうせすぐにグシャグシャにされてしまう。
階段を下りて一階のリビングへ行く。テーブルの上にはトーストと蒸し野菜を添えた目玉焼き…それにコーンスープが置かれていた。
少し悩み、私はトーストを一口だけかじり朝ごはんを終えた。
先程いたお母さんはもう家にいない。さっき車の音がしていた。
今日はお仕事、早出だって言ってたっけ。
「いってきますくらい言ってよ…」
呟いて、私も家を後にした。
頭が痛い。
「いってきます…」
今日はどんな事をされるだろう。
友達ドールは、いつ私の元に来るのだろうか。
***
学校に到着。二階にある二年生のクラスは三つあり、私は一番奥の2-Aというクラスだった。
もうすぐ先生が来るというのに、今だクラスの中は賑やかな声で溢れていた。
意を決してドアに手をかけた。
ガラッと音を立てて開かれるドア。
『……………』
その瞬間、ピタリと静まる話し声や笑い声。
男子も女子も、私を見つめている。
注目を浴びるのは、嫌いだ。
遅刻をしたせいもあるけれど、この視線は…。
「やだー、優衣ってば遅刻ギリギリ~!」
「なぁに~?遅れて登場とか主役気取り~?」
「優衣が主役とかマジないって!あるとすれば通行人Bとか?」
「何それウケる!ねっ、皆!通行人Bさんが通りますよーっ!あはははは!」
『あはははっ!!』
―――――始まった。地獄の始まり。笑い声が脳みそに響いて広がった。
私は急いで自分の席へ向かう。
「ちょっと待ってよ優衣」
「ぐぁ!?」
ぐいっと、髪を後ろに思いきり強く引っ張られて変な声が出た。また笑い声が聞こえる。
「私達が折角いい名前つけてあげたんだから、言うことがあるでしょ?」
「あ……ありがとう、ございます……!」
「よーし良くできました~」
なでなでと髪から手を離し、私の頭を撫でてくるのは、同じクラスの紺野 理香子。
「理香子~手ぇ汚れるよ?」
「あ、そぉだった~手ぇ洗ってこよーっと」
「私もついてく!」
「きゃ…」
ドンッと横にいた私を手で押しながら理香子の後を追うのが春日 紫乃。
この二人が私の地獄を作った元凶。
「………」
冷たい視線の中、自分の席にたどり着く。
『ビッチ! 二股女~W 男募集中! 死ね』
ところせましと机に書かれた、酷い言葉達。
指で擦ってみるが、油性らしい。
それでも指で擦り続ける。
ポタリと、何かが私の目からこぼれた。
泣いてない。私は強い子だ。大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫……
ガラッと音がした。
「皆、出席とるぞー!」
先生が入ってくる。担当の川西先生だ。
辺りを見渡し、顔を曇らせた。
「なんだなんだ?チャイムはもう鳴ったのに、二人足りないぞ!」
「すみません、今戻りました~」
「川ちゃん先生ごめんなさい~!」
理香子と紫乃が申し訳なさそうに入室てくる。
川西先生は「仕方のない奴らだ…後で職員室に来るように!」と二人に言い放った。
自分の席へと向かう理香子。すれ違い様に私に向かってこう呟いた。
「…あんたのせいで怒られちゃったじゃん…マジ死んでよ優衣…」
私のせいじゃない。死ねなんて軽々しく言わないで…!そう言いたかったけど、私にはその勇気が出なかった。
こんな時に友達がいれば…理香子に反論してくれたり、先生に本当の事を言ってくれたりするのかな。
私は目を閉じる。
「さて、授業を始めるぞ!今日は昨日の続きを―――」
早く、早く。
今日が一秒でも早く終わりますように。
身だしなみは整えても駄目だ。どうせすぐにグシャグシャにされてしまう。
階段を下りて一階のリビングへ行く。テーブルの上にはトーストと蒸し野菜を添えた目玉焼き…それにコーンスープが置かれていた。
少し悩み、私はトーストを一口だけかじり朝ごはんを終えた。
先程いたお母さんはもう家にいない。さっき車の音がしていた。
今日はお仕事、早出だって言ってたっけ。
「いってきますくらい言ってよ…」
呟いて、私も家を後にした。
頭が痛い。
「いってきます…」
今日はどんな事をされるだろう。
友達ドールは、いつ私の元に来るのだろうか。
***
学校に到着。二階にある二年生のクラスは三つあり、私は一番奥の2-Aというクラスだった。
もうすぐ先生が来るというのに、今だクラスの中は賑やかな声で溢れていた。
意を決してドアに手をかけた。
ガラッと音を立てて開かれるドア。
『……………』
その瞬間、ピタリと静まる話し声や笑い声。
男子も女子も、私を見つめている。
注目を浴びるのは、嫌いだ。
遅刻をしたせいもあるけれど、この視線は…。
「やだー、優衣ってば遅刻ギリギリ~!」
「なぁに~?遅れて登場とか主役気取り~?」
「優衣が主役とかマジないって!あるとすれば通行人Bとか?」
「何それウケる!ねっ、皆!通行人Bさんが通りますよーっ!あはははは!」
『あはははっ!!』
―――――始まった。地獄の始まり。笑い声が脳みそに響いて広がった。
私は急いで自分の席へ向かう。
「ちょっと待ってよ優衣」
「ぐぁ!?」
ぐいっと、髪を後ろに思いきり強く引っ張られて変な声が出た。また笑い声が聞こえる。
「私達が折角いい名前つけてあげたんだから、言うことがあるでしょ?」
「あ……ありがとう、ございます……!」
「よーし良くできました~」
なでなでと髪から手を離し、私の頭を撫でてくるのは、同じクラスの紺野 理香子。
「理香子~手ぇ汚れるよ?」
「あ、そぉだった~手ぇ洗ってこよーっと」
「私もついてく!」
「きゃ…」
ドンッと横にいた私を手で押しながら理香子の後を追うのが春日 紫乃。
この二人が私の地獄を作った元凶。
「………」
冷たい視線の中、自分の席にたどり着く。
『ビッチ! 二股女~W 男募集中! 死ね』
ところせましと机に書かれた、酷い言葉達。
指で擦ってみるが、油性らしい。
それでも指で擦り続ける。
ポタリと、何かが私の目からこぼれた。
泣いてない。私は強い子だ。大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫……
ガラッと音がした。
「皆、出席とるぞー!」
先生が入ってくる。担当の川西先生だ。
辺りを見渡し、顔を曇らせた。
「なんだなんだ?チャイムはもう鳴ったのに、二人足りないぞ!」
「すみません、今戻りました~」
「川ちゃん先生ごめんなさい~!」
理香子と紫乃が申し訳なさそうに入室てくる。
川西先生は「仕方のない奴らだ…後で職員室に来るように!」と二人に言い放った。
自分の席へと向かう理香子。すれ違い様に私に向かってこう呟いた。
「…あんたのせいで怒られちゃったじゃん…マジ死んでよ優衣…」
私のせいじゃない。死ねなんて軽々しく言わないで…!そう言いたかったけど、私にはその勇気が出なかった。
こんな時に友達がいれば…理香子に反論してくれたり、先生に本当の事を言ってくれたりするのかな。
私は目を閉じる。
「さて、授業を始めるぞ!今日は昨日の続きを―――」
早く、早く。
今日が一秒でも早く終わりますように。



