次の日、私達は電車に揺られながら二駅先の大型ショッピングモールに向かっていた。

夏休み初日ということもあり、電車はどこも満席で混んでいる。

「大丈夫?優衣ちゃん」
「う、うん…優は大丈夫?」
「平気だよ、ありがとう」

ガタンっと電車が大きく揺れる。
優の体がよろけて、後ろにいた男の人にぶつかった。

「あ!やだ、ごめんなさ……あら?」
「白鳥?」

聞いたことのある声―――…。
私は目を疑った。
だってそこにいたのは…永野君だったから。

「スゲー偶然じゃん…!」

永野君が嬉しそうに目を細める。

「本当ね、永野君もお出かけ?」
「うん、ちょっとね…白鳥は?」
「私は優衣ちゃんとお買い物に…ね、優衣ちゃん」
「あ、うん…」
「横手もいたんだな。…そっか」
「な、何…?」
「いや?別に…それよりさ、白鳥。昨日の…」


…………。



何だろう。
今の、少し感じ悪かった。
永野君は私に視線もくれず、ただ優と親しげに話込んでいる。
やっぱり永野君にとって私は邪魔者みたいだ。

私は唇を噛み締めた。

もうすぐ目的地に着く。
アナウンスが聞こえて私は優の手を取った。

「ごめん、永野君…私達ここで降りるから」
「え、嘘…マジで?俺もここで降りるんだよ」
「―――え?」
「わぁ、本当にスゴい偶然ね」

優がにこりと笑った。
永野君もそれに笑顔で応じる。


―――偶然?

―――本当に…?


そう思いながらも電車を降りる私達と永野君。
電車に乗っていた過半数の乗客達もゾロゾロと降りてきていた。
邪魔にならないように、改札を通り、駅の隅っこへと移動する。

「…永野君は、どこに行くの?」
「俺?この先のショッピングモールだよ」

…やっぱり、そう言うと思った。
この駅で降りる人の大半は、ショッピングモールに行くのが目的だから。
同じ電車に乗ってしまった時点で、私達の目的地はバレていたのだろう。


「スゴい偶然…私達もなの!」


そのことを知らない優は、偶然を信じてその大きな目をキラキラさせていた。


「マジか!なら一緒に行かね?」
「えぇ、勿論!」
「ゆ、優―――…」

優の名を呟くも、話はどんどん進んでいく。

―――そして。

「優衣ちゃん?行きましょう」
「置いてくぞ~横手!」
「ま…待って!」




結局私達は、三人でお買い物をすることになったのだった。