「…え…いいの…?」

私は目を見開いた。
優は相変わらずニコニコしている。

「優衣ちゃんが嫌な気持ちになるなら、もう理香子さんとも紫乃さんとも話さないし、関わらないわ」
「ほ、本当…?」
「言ったでしょう、私は優衣ちゃんが一番大切なの。優衣ちゃん以外はどうでもいいの。優衣ちゃんが嫌なこと、私はしたくないんだよ」

健気な言葉の数々に、私は涙を流す。

「ご、ごめん、ごめんね私…自分勝手に優の心を振り回してるよね…!」
「ふふふ、何で?…私嬉しいの!優衣ちゃんが本当の気持ちを教えてくれて!」
「――優…!」

ぎゅうと優を抱き締める。強く強く。

「優衣ちゃんてば、苦しいよぅ」

優がそう言いながらも締め返してくれる。
私と同じように、強く。
密着した優の体はポカポカと温かくて、私は目から涙を流した。


***

次の日、学校に登校した私と優の姿は、図書室にあった。
私が借りていた本を返すためだ。

「五冊も借りてたんだね、優衣ちゃん」
「うん、本を読むのって好きなんだ」
「今度私にもおすすめの本、教えてね」
「うん、勿論…すみません、返却です」
「はい、此方にどうぞー」

図書委員の女の子に一つずつ手渡しで本を返していく。
ふと、最後の一冊に目がとまった。
それは『友達ドール』の話が載っていた不思議な本。
思い返せば、この本のおかげで優という大切な友達ドールに出会えたんだ。

「…ありがとう…」

私は小さく呟き、ココア色の表紙を撫でた。

「…はい、全て返されました」
「またよろしくお願いします」

軽く頭を下げて、優と図書室を出る。
そういえば…『友達ドール』の著者って誰だったっけ…?

「行こう優衣ちゃん、授業に遅れちゃう」
「…うん!優ってば待ってー!」

まぁいいか。
もう私には、関係ないから。


不思議なことに、あの不思議な本のタイトルさえ、今はもう思い出せなかった。