「それで…嫌われたって…理香子に?」

私が言うと、「理香子以外に誰がいるのよ」と冷たく返された。
私が押し黙り、また沈黙が場を包んだ。
優がアイスティーを飲む音がする。
私もストローでオレンジジュースを飲むと、紫乃も頼んだメロンソーダを飲んでいた。
ごくん、と紫乃の喉がなる。
そしてまたゆっくりと話し始めた。

「……今日のお昼すぎ…、理香子から会える?ってメッセージがきて…私、今日はずっと家にいたんだけどすぐに用意して理香子に会いに行ったの…」
「……うん」
「近くに公園があるでしょ…あそこは保育園の頃の…私と理香子のお気に入りの遊び場だったの。そこが待ち合わせ場所だった」

紫乃は肩を震わせた。

「私が着く頃にはもう理香子は公園にいて、ブランコの方をじっと見つめてた。少しして私に気づいて、こう言ったの」


―――ねえ、紫乃。



―――友達、やめよう。アタシ達。


「……それ…そんなの…って……」
「理香子さん、何で………」

目を丸くする私と、悲しそうに呟く優。
紫乃は涙を流していた。

「理由は話してくれなかった。昨日渡したプレゼントも…使ってくれないまま返されちゃった」
「プレゼント?」

優が首をかしげる。
面倒くさそうに紫乃が答えた。

「ブランド物の、香水よ。私と理香子のお気に入りの奴の新作を一昨日手に入れて…昨日があんなことになったから、その仲直りになればと思ってプレゼントしたの…理香子に嫌われたくなかったから…捨てられたくなかったから」



―――香水?

そこに私は引っ掛かった。

「優衣ちゃん、香水って確か……」

優もその違和感に気づいたようだった。
今日そのワードを、私はどこかで聞かなかっただろうか?

私は思い出す。学校での事を。

確か理香子が永野君と揉めていた時…理香子は手に何かを持っていなかったか?

『―――香水だよ!自分の鞄にかけようと思ってたの!』

香水…そうだ、香水だった!
もしもそれが紫乃のプレゼントした香水だとしたら――理香子は香水を使おうとしていたことになる。

「…なに、何かあるの…?」
「あ、あのね紫乃―――!」

私は紫乃に、今日学校であったことを全て話した。