場所を近くのカフェに移したのは、私の提案だった。
あそこは通学路が近く、クラスの子達に目撃される可能性があったから。
昨日の一件で理香子に裏切られたとはいえ、その相棒的存在だった紫乃と、私達が一緒にいたなんて知られたら、それこそ大変だ。
適当に飲み物を頼んで、私は前の席に座った紫乃を見つめた。
「…なに…?」
紫乃がジロリとした目付きで呟いた。
私は一瞬怯む。けど、横に座る優がテーブルの下で手を繋いでくれたから、勇気を出して聞くことにした。
「その…何で泣いてたの…?」
「…優衣に関係ないでしょ…」
「か、関係ないけど…放っておけないよ…」
「……………」
沈黙が続く。
店員のお姉さんが頼んだ飲み物を持ってきてくれるまで、紫乃は下を向き黙ったままだった。
「紫乃さん、それ可愛いね」
「…は?」
「優…?」
優がアイスティーにストローを差しながらほほ笑んだ。
「その髪に結んでるピンクと白の混ざったシュシュ…手作りでしょう?とても可愛い!紫乃さんに似合ってるよ」
ね、優衣ちゃん。
私の方を見て優が言った。私は頷く。
そのシュシュは初めて会った時から、紫乃の目立つツインテールを飾っていたっけ。
……あれ?……確か、それは………。
「昔、理香子に…貰ったんだよね?」
私の言葉に紫乃が顔をあげる。
その目には涙が浮かんでいた。
「え、あ…紫乃……?」
「紫乃さん、大丈夫……?」
私達が戸惑っていると、紫乃は手で涙を拭いながらぼそぼそと話し始めた。
「……理香子に、嫌われたの……」
出会ってすぐの頃、一度だけ聞いたことがある。
理香子と紫乃が、幼稚園から一緒の親友だっていうことを。
紫乃は理香子のことが大好きで、ずっと理香子の後ろを追いかけていたとも。
「理香子はいつも皆の中心で…美人だし、何でも涼しい顔でこなす私の自慢の友達だったの」
シュシュをもらったのは小学校の終わりだったと紫乃が懐かしそうに語った。
お揃いのランドセルはもう使わなくなるからと理香子が作ってくれたのが、そのシュシュだと。
中学に入り、クラスが別れた時も…お揃いのシュシュを見て絆を確認できたんだと紫乃は言う。
「だけど高校に入って…理香子はシュシュを着けなくなったの。中学の頃は手首にはめてたのに…」
それを見た紫乃は、理香子の中で自分の存在が薄れていっていると感じたそうだ。
一年になり、またクラスが別れてしまった。
どうにか理香子の心を繋ぎ止めていたかった紫乃は、ある日私に出会う。理香子の紹介で。
「合コンの数合わせで連れてくって聞いたの。紫乃も合コン、行くでしょ?って言われてすぐに頷いた。私、久しぶりに理香子が話しかけてきてくれたのが嬉しかったから。」
そして合コンが始まってしばらく経ったとき、私が奏太君と席を立ったことが問題になったらしい。
「それって…理香子が、奏太君を狙ってたから…?」
「そうよ…あの後、理香子が怒って帰っちゃって…合コンはお開き。私もすぐに帰ったの」
「な、なんか、ごめん…」
思わず謝ってしまう。
「理香子さん、何でそんなに奏太さんにこだわったのかしら…?」
優がもっともなことを呟く。
紫乃は分からないの…と首を振った。
「ただ…奏太君ってかなりのお金持ちだって合コンに参加してた他の男の子から聞いた…」
「……え?……そんなこと知らなかった」
奏太君のことを思い出すけれど、庶民的な男の子で、そんな感じは全くなかったと記憶している。
理香子は…お金目的で奏太君を狙っていた…?
あそこは通学路が近く、クラスの子達に目撃される可能性があったから。
昨日の一件で理香子に裏切られたとはいえ、その相棒的存在だった紫乃と、私達が一緒にいたなんて知られたら、それこそ大変だ。
適当に飲み物を頼んで、私は前の席に座った紫乃を見つめた。
「…なに…?」
紫乃がジロリとした目付きで呟いた。
私は一瞬怯む。けど、横に座る優がテーブルの下で手を繋いでくれたから、勇気を出して聞くことにした。
「その…何で泣いてたの…?」
「…優衣に関係ないでしょ…」
「か、関係ないけど…放っておけないよ…」
「……………」
沈黙が続く。
店員のお姉さんが頼んだ飲み物を持ってきてくれるまで、紫乃は下を向き黙ったままだった。
「紫乃さん、それ可愛いね」
「…は?」
「優…?」
優がアイスティーにストローを差しながらほほ笑んだ。
「その髪に結んでるピンクと白の混ざったシュシュ…手作りでしょう?とても可愛い!紫乃さんに似合ってるよ」
ね、優衣ちゃん。
私の方を見て優が言った。私は頷く。
そのシュシュは初めて会った時から、紫乃の目立つツインテールを飾っていたっけ。
……あれ?……確か、それは………。
「昔、理香子に…貰ったんだよね?」
私の言葉に紫乃が顔をあげる。
その目には涙が浮かんでいた。
「え、あ…紫乃……?」
「紫乃さん、大丈夫……?」
私達が戸惑っていると、紫乃は手で涙を拭いながらぼそぼそと話し始めた。
「……理香子に、嫌われたの……」
出会ってすぐの頃、一度だけ聞いたことがある。
理香子と紫乃が、幼稚園から一緒の親友だっていうことを。
紫乃は理香子のことが大好きで、ずっと理香子の後ろを追いかけていたとも。
「理香子はいつも皆の中心で…美人だし、何でも涼しい顔でこなす私の自慢の友達だったの」
シュシュをもらったのは小学校の終わりだったと紫乃が懐かしそうに語った。
お揃いのランドセルはもう使わなくなるからと理香子が作ってくれたのが、そのシュシュだと。
中学に入り、クラスが別れた時も…お揃いのシュシュを見て絆を確認できたんだと紫乃は言う。
「だけど高校に入って…理香子はシュシュを着けなくなったの。中学の頃は手首にはめてたのに…」
それを見た紫乃は、理香子の中で自分の存在が薄れていっていると感じたそうだ。
一年になり、またクラスが別れてしまった。
どうにか理香子の心を繋ぎ止めていたかった紫乃は、ある日私に出会う。理香子の紹介で。
「合コンの数合わせで連れてくって聞いたの。紫乃も合コン、行くでしょ?って言われてすぐに頷いた。私、久しぶりに理香子が話しかけてきてくれたのが嬉しかったから。」
そして合コンが始まってしばらく経ったとき、私が奏太君と席を立ったことが問題になったらしい。
「それって…理香子が、奏太君を狙ってたから…?」
「そうよ…あの後、理香子が怒って帰っちゃって…合コンはお開き。私もすぐに帰ったの」
「な、なんか、ごめん…」
思わず謝ってしまう。
「理香子さん、何でそんなに奏太さんにこだわったのかしら…?」
優がもっともなことを呟く。
紫乃は分からないの…と首を振った。
「ただ…奏太君ってかなりのお金持ちだって合コンに参加してた他の男の子から聞いた…」
「……え?……そんなこと知らなかった」
奏太君のことを思い出すけれど、庶民的な男の子で、そんな感じは全くなかったと記憶している。
理香子は…お金目的で奏太君を狙っていた…?



