友達ドール

次に目が覚めると、自室のベッドの上だった。
なぜかとても目覚めがいい。
いい夢を見ていたような気もする。

………夢?

そうだ、私は……確か……!


「ドールを…友達ドールを貰ったんだ!」


私は行けたんだ、友達ドール店に!

よし!と小さく呟き喜びを噛み締める。
ふと、枕元から一冊の本が出てきた。これは前日の夜に私がおいた物。『友達ドール店』もこの本の中に書いてあった不思議な話の一つだった。
世の中の不思議な話を集めたというその本とは、私が通う高校の図書室でであった。
一目見て気に入り、借りてしまうほどに引き付けられたのが『友達ドール』の内容。
著者は…一人一人、本に書かれた内容で変わるようだが、『友達ドール』を書いたのはエリスという女性だった。

その内容はこうだ。

『満月の美しい夜、友達が欲しいと強く念じながら、金平糖を口に含み眠りにつきなさい。うまくいけば、夢の中にお店が出てきます。そのお店こそが友達ドール店です。店長の指示に従って、理想の友達ドールを手に入れましょう。友達ドールはあなたの友達。あなただけの友達です』

友達ドールは友達を、けして裏切らない。
その言葉だけで、実行するには十分な理由となった。
私はその夜、満月が出ているのを確認して、買ってきた金平糖を一つ口に含み飲み込んだ。
ごくん、と喉がなる。月の光に照らされ、まるで星を飲み込んだみたいな気分がした。

そしてごろんとベッドに倒れこみ、念じた。

友達が欲しい――本当の友達が欲しい、と。


「まさか本当に夢を見れるなんて…」

友達ドールは贈り物として貰った。
店長の指示に従って、友達ドールを選び、住所と名前もちゃんと書いた。
後日発送するってあったけど……。

「…あれ?」

興奮しすぎてて、今の今まで気づかなかった。
「何で私、学校の制服を着てるの…?」
昨夜は確か、お風呂に入りお気に入りのパジャマに着替えてから寝た筈だ。
そういえば…夢の中でも私は制服姿だった。

「…これも不思議の一つ…なのかな」

もう一度本のページを開く。
『友達ドール』のページを見ると、最後になぜか小さく注意書きがあった。
「…えっと…夢の中ではその人の、現在の心に深く関わる服装で登場します……?心に深く関わる?」


……もしかして。
一つだけピンと来てしまった。

あの地獄を。



トントン!!

そこまで考えた時、部屋のドアを誰かが叩いた。お母さんだ。

『ちょっと優衣!いつまで寝てるの!もう八時過ぎてるわよ!?早く支度して学校に行きなさい!!』



―――あぁ五月蝿い。



……大好きな母の声が、この時は地獄の始まる合図に感じた。