「えー、今日から皆の新しい仲間になる…」
「白鳥 優です。よろしくお願いいたします」

先生が来て、自己紹介が始まった。
皆の前で深々とお辞儀をする優。
白鳥という名字は、恐らくエリスさんがつけてくれたのだろう。優にピッタリだと思う。
周りを盗み見ると、男子達の鼻の下がだらしなく伸びていた。

「席は…そうだな…横手の隣が空いてるからそこに座りなさい。二人は友達だというし、校内の案内も横手に任せよう」

いいな、横手!と言われて、はいと頷いた。

「優衣ちゃん、お隣失礼します」

優が隣の席に腰かける。
私と目が合い、にこりとほほ笑んだ。

「これからよろしくね優衣ちゃん」
「うん、優。よろしくね」

優と話していると、また私に視線が集中するのを感じた。
けれどそれは先程のような冷たい物ではなく、優と話している事への羨望のそれだ。
皆が優と話したがっている。
その横に私がいることなんて、忘れられているだろう。

「優はきっとすぐに人気者になるよ」
「ふふ、そうかな?」
「…うん、そう思うの」

実際、私の予感は的中した。

授業が終わり、お昼のチャイムが鳴り響く。

「それじゃあ今日の午前の授業はここまで!皆しっかり食って午後に備えろよ~」

先生が教室を出ていく。
その瞬間、優の周りにクラスメイトの皆が集まってきた。

「ねぇねぇ白鳥さんって、前はどこの学校にいたの!?」
「この時期に転校とか、何かワケアリ?」
「綺麗な髪~どんなお手入れしてるの?何か特別なもの使ってる??」
「白鳥さん超可愛いーね!」
「あ、コラ!抜け駆けすんなよ…」
「もぅ男子うるさ!白鳥さん困っちゃうでしょ!」

―――質問ラッシュだ。
この人達、皆…優と友達になりたいんだろう。
何だか優に私以外の友達ができるって思うと…少しだけ複雑な気持ち。私はいつからこんなに心が狭くなっちゃったんだろう。
隣に座る優は、笑顔のまま皆からの質問に答えていた。

小学校一年生から六年生まで、日本の学校に通ってたこと。
転校は親の仕事の都合だということ。
全てそういう『設定』だ。

「髪のお手入れは特にしてないかな…毎日きちんと、丁寧に髪を洗って乾かして、櫛を通すくらいなの。可愛いって言ってくれてありがとう…嬉しいけどちょっと恥ずかしいなぁ…それと皆とお話しするの楽しいから、全然困ってないよ、心配してくれてありがとう」

優の優しい言葉と笑顔に、皆が顔を赤らめた。
皆、優の虜だ。
優はその鈴の音のように澄んだ声で続けた。

「このクラスの一員になれて良かった…皆とても優しいんだもの!だから………」

一呼吸して優は笑顔でハッキリと、告げた。


「もう二度と、優衣ちゃんをイジメないで」


教室に衝撃が走った―――。