友達ドール

夏休みも折り返し地点というとき、親戚一家が遊びにきたことがある。
皆でバーベキューをしようという話になって、庭先で親戚のお兄さんと用意をしていると、お母さんがお財布を持って近づいてきた。

『お金預けるから、二人で買い出しに行ってきてちょうだい』

私はお兄さんと買い出しに行くことになった。
―――二人で、だ。

野菜とお肉を買って、帰路につきながらお兄さんと談笑していると、背中に視線を感じた。

「なんとなく後ろを振り返ったら…紫乃がいたの」

いつも子供っぽく振る舞い、可愛い甘えん坊キャラだった紫乃が、不気味な笑顔で此方を見ていた。
それはそれは背筋が凍るような、笑顔。

「お兄さんの手を引っ張って、走って家に帰ったの…その時に彼氏がいるって思われたのかもしれない…」
「優衣ちゃんが後ろめたいことしてるって思ったのかな…その紫乃さんって子、笑ってたんだよね?」
「うん…とにかく、一年の夏の新学期になってから二年の今に至るまで、嫌がらせをされ続けたの。冬になる頃には、髪を引っ張られるのは日常になってたし、掃除当番や宿題を押し付けられることも多くなった」
「昨日も優衣ちゃん、一人でお掃除してたもんね…」
「…うん、でも…だからあの日は優と出会えたんだよね」

昨日ばかりは感謝かな、なんて。
チロッと舌を出しておどけてみる。
優がクスクス笑っていた。

学校につく。

「じゃあ優衣ちゃん、私は先に職員室に行かなきゃだから…」
「そうだよね…また、後で会えるよね?」
「えぇ!また後でね」
「うん、後でね、優」

名残惜しく感じながら、繋いだ手を離す。
教室に向かう私を、優が後ろから見守ってくれていた。


教室の前まで来た。
呼吸を整えて、真っ直ぐに前を見据える。


ガラリ。


皆からの視線が一斉に突き刺さった。
理香子が私の机に腰かけて、ニヤニヤと笑っている。
その隣にはいつものように紫乃がいた。

「ゆーい!こっちおいで~うちらが良いものあげるから~」

可愛く手招きする紫乃。

「ほらほら、早くおいでよ優衣~」

目を細めて笑う理香子。

嫌な予感しかしなかった。

けれど、行かなければまた違う、酷い事をされるかもしれない……。
私はゆっくり歩いていく。

優、優……!早く来て……!!




―――その願いは、優に届いた。

ガラリと教室のドアが開く。




「優衣ちゃん、きたよ」