友達ドール

朝ごはんを食べて歯を磨き、私達は玄関に移動する。
「忘れ物はない?」
「大丈夫だよ、優ってばお母さんみたい~」
「私は優衣ちゃんの友達でーす!…ふふ」
「あはは」
黒のローファーを履き、誰もいなくなる家に声をかける。

「行ってきます」

***

家から学校まで、歩いて15分はかかる。
私はその間に、優に打ち明けておく事にした。
私の、イジメの原因を。

「始まりは一年の入学式…一人だった私に理香子が声をかけてきたの」

優と二人。
仲良く手を繋ぎ、歩き慣れた通学路を並んで歩く。
道行く男の人達が、皆一様に優に見とれているのがわかった。
全員チラチラと此方を振り返っている。

「その時は嬉しかった…中学からの友達は皆、別のクラスになっちゃって…もうクラスのグループ分けも大体できてたから私、一人で浮いてたの」

私は前を向いて続けた。

「少し話した後に紫乃って子も合流して、三人で今度の日曜に遊びに行こうって事になった。そして日曜が来て…私達は近くのカラオケボックスに行ったんだけど…そこには知らない男の子達がいて…」
「…え?それって…」
「不思議に思って理香子に聞いたら、合コンだって言われたの。私ビックリしちゃって、帰ろうとしたんだけど…あんたはただの引き立て役だし、数合わせで連れてきただけだから何もせずに座っといてって言われたの」

そう、最初から理香子はそのつもりで私に声をかけただけだった。
誰でも良かったんだ。自分達の引き立て役が欲しかっただけ。

それを知ったときは悲しかった。

「高校で初めて友達ができたって思ってたんだけどな…」
「…優衣ちゃん…」
「…そ、それでね。合コンしてる間、言われた通りに座ってたんだけど、ヒマで…理香子達を観察してたんだ。そしたら男の子の一人から話しかけられちゃって…話を合わせてたら、気に入られたみたいで…近くのカフェで二人で話そうって言われて私…その時は一刻も早く理香子達から離れたかったから、ついていったの」
「その男の子から何かされた…?」
「ううん、普通に話して、意気投合。友達になろうって言われて…お互いのメッセージアプリを登録して別れたよ」
「そうなんだ、でもそれとイジメが、どう繋がるの…?」

優がこてんと首をかしげた。
私は苦笑する。

「私と出ていったその男の子…奏太さんって言うんだけど、理香子が狙ってた人だったんだよ」
「…それは…運が悪かったね……」

本当に、私もそう思うよ。
手前の角を左に進むと、桜並木が目の前に広がる。
そこを進み坂を上ると、学校はすぐだった。

「それでプライドが傷ついたのか、次の日に私への無視が始まったの。それがエスカレートしていったのは…夏休みが終わった後だった。登校日にはクラス中の生徒が私を無視してて…」
「え、何で?そんな急に……」
「理香子が紫乃と一緒に、クラスの子達に連絡してたらしいの…横手 優衣は彼氏がいるのに合コンに参加する最低なビッチ女だから、皆でハブろうって―――…あ、言っておくけど、私には彼氏なんていないからね…信じて、優…」
「うん、信じてるよ。…でも不思議だね。何で理香子さん達は、優衣ちゃんに彼氏がいるなんて勘違いしたんだろう…?」

その言葉に私は空を見上げる。

「あの頃の私は、本当に、運が悪かったの」