互いに睨み合い、今にも殴りかかりそうな二人を「二人とも落ち着きましょうよ!後輩たちが見てるのよ?」とヤマトが慌てて間に入る。

「ヤマト!だってよ〜……」

ムサシが何かを言おうとしたその時、ミカサの無線にカスガから連絡が入る。

「ギリシャから協力要請が入った!セイレーンが船を沈めようとしているそうだ!」

「了解、すぐに向かいます」

セイレーンとは上半身が人間の女性、下半身が鳥の姿をした妖怪だ。美しい歌声で人を惑わし、遭難や座礁に遭わせる。

「何をしているの。早く行くぞ」

ムサシとヤマトにミカサは声をかけ、訓練所を出て行く。新人たちには目もくれない。

「ごめんね〜!代わりの人が来るから〜」

ヤマトが新人たちにそう言っていた。ミカサは振り返ることなく走る。

特殊警察の凶悪事件の部署の部屋へと、ミカサは走る。部屋の奥には古びたクローゼットが置かれている。ミカサは素早くそのクローゼットの中に入り、扉を閉めた。

呪文をミカサが唱えると、ゴゴゴと低い音がクローゼット内に響く。このクローゼットは他の国の特殊警察のもとへ行けるのだ。言葉は特殊警察同士ならば、頭の中で自然と翻訳される。