「この後、理央と会うの?」


壱夜にしてはやけに低い声だった。


「会うの?」


なにも答えない私に痺れを切らしたかのように、もう一回聞いてくる。

いつも優しい壱夜がちょっとだけ怖く感じた。


「…うん、参考書持って来てくれるみたい」

「ふーん」


自分から聞いたくせに、私が答えると気のないような返事をして。

でも真顔で私の顔を見つめる壱夜。


「なに?」


沈黙に耐えきれずそう聞くと、ギュッと握りしめられていた腕をふわっと持ち上げられて、その勢いで後ろに倒れた。

私の頭が乗ったせいで、後ろの置いてあったふかふかのクッションがぼふっと音を立てる。

天地がひっくり返って一瞬何が起こったか分からなかった。

映っていた天井の景色に壱夜の顔が飛び込んできて、私の顔の横にそっと手をついた。



「ねー」

「な、なに?」

「理央と今でも2人で会ったりしてるの?」


壱夜は真っすぐ私を見つめる。

え…なんか壱夜、怒ってる?