いくつ路地を曲がったか分からない。

お兄ちゃんが立ち止まったので顔を上げると、そこには大きな建物。

…と、大量のバイクと、
……沢山の男の子たち。

毎晩のようにお父さんに、汚い手で触られて、男の子が怖い私。

中学校でも何度か倒れてお兄ちゃんに迎えに来てもらったことがあるくらい。

思わず、足がすくんで、何とか立っていようと、お兄ちゃんの腕をぎゅっと掴む。

「ここの奴らは大丈夫だから。でも、お前からしたら鬼畜だよな。今日はやめとくか?」

頭の上から優しい声が降ってくる。

「ううん!大丈夫。お兄ちゃんがいれば。た、多分だけど。だけど絶対美桜と一緒にいて?」

「おう、当たり前だろ。」

建物に近ずいて行く。

男の子たちの所まで、あと10メートルくらいのところで1人の男の子がぱっと顔を上げた。

その瞬間、
「蓮翔さん!見回りお疲れ様です!」

その男の子が立ち上がって、深々と顔を下げる。

そうすると、周りにいた、50人くらいの男の子たちも、「お疲れ様です!」と頭を下げる。

見るからに、不良。
そして、確実に年上。

そんな彼らにお兄ちゃんは、

「あぁ。」

の一言。

私が固まっているのに気づくと、ふわっと抱き上げられた。

140センチしかない私。
お兄ちゃんは180センチくらい。

見ている世界が全然違う。

ぼーっとされるがままな私だったけど、

えっと…お姫様抱っこ?

そして周りからは、視線がすごい。

恥ずかしさと、怖さでお兄ちゃんの胸に思わず顔を埋めた。