「ちゃんと視聴覚室に行ったよ!
篠田くんの唇の端が切れてたから、絆創膏も貼った!
……緩くだけど!」



「嘘だ…、ありえない。
あぁ、そうか、桃奈ちゃんがあまりにも地味すぎて存在に気付かなかっただけだ。きっとそうだ」




蜂谷くんは何かブツブツ呟くと、フラフラしながら廊下を歩いていった。



……一体なんなの、失礼しちゃう。



む、と唇を尖らせていたら、




「桃奈ちゃん」




後ろから、私を呼ぶ声が聞こえた。




「立花先輩!
おはようございますっ」



「おはよう。礼儀正しいねー桃奈ちゃん」



「え?普通ですよね?」




挨拶は基本だよ。




「そっか。
俺らの挨拶は拳が飛んでくるからなぁ」




あはは、と笑いながら言う先輩。



いや全然笑えないですけど!?