亜香里ちゃんの両親は弟の方を大切にしていた。


そんな時に2人とも同時に感染症にかかってしまったら、どちらを優先して看病するだろうか?


考えなくても、答えは簡単だった。


亜香里ちゃんの両親は、洋司君につきっきりなったことだろう。


「そうかもしれないな。もしかしたら亜香里ちゃんは1人で苦しみながら死んだのかもしれない。そうだとすれば、こんな風に未練を残していても納得できる」


広貴はあたしの意見に賛成してくれた。


「そうだね……。でも、亜香里ちゃんのお墓がどこにあるかわからないから、供養してあげることも難しいよ」


原因がわかったところで、あたしたちにできることなんてほとんどない。


そう思った時だった。


「それならこれ、使えるんじゃない?」


愛奈がそう言ってテーブルに置かれている百合の花を指さした。