「純奈!」


名前を呼ばれて振り返ると杏美と愛奈がいた。


2人とも表情は険しく、そして青ざめている。


「2人とも……!」


駆け寄ろうとしたとき、紀人が視界に入った。


机に座っている紀人の右腕には白いギプスがされている。


「これってどういうこと? あたしたち、ずっと授業を受けていたことになってるの?」


そう聞くと、2人は同時に頷いた。


「たぶん、そうなんだと思う。紀人の怪我は昨日自転車でこけたことになってるみたい」


愛奈が早口に説明した。


「そうなんだ……」


あの部屋に入っている間も、あたしたちはいつもの日常を過ごしていることになっているみたいだ。


記憶の改ざん?


それとも、誰かがあたしたちになりきって日常を送っている?


考えてみても、ちっともわからなかった。


頭の中にはだ亜香里ちゃんの悲鳴が響いて来ているような感覚がして、頭痛がした。