「紀人……頑張って……」


愛奈の震える声が聞こえて来る。


紀人は埃まみれの床に横になり、荒い呼吸を繰り返していた。


「骨が折れてるかもしれないから、腕を固定しておいた方がいいかもしれない」


元浩がそう言い、自分のパジャマの上を脱いだ。


ボタンと留めたTシャツの中に紀人の右腕を通し、腕の部分を首の後ろでくくって固定するみたいだ。


しかし、紀人は上半身を起こすだけで苦しそうな声を上げている。


「絶対に外へ出られるから! そしたらすぐに病院へ行こうね!」


痛がる紀人を、愛奈が懸命に励ましている。


そしてどうにか包帯のようにパジャマを巻いたとき、急激な眠気があたしを襲っていた。


まるで何日も徹夜をしたような、あらがえない眠気。


足元がふらついて立っていられない。


視界がグニャリと歪んで、広貴が倒れるが見えた。


「広貴……!」


咄嗟に手を伸ばそうとしても、体はいうことを聞かなかった。


あたしはそのまま、横倒しに倒れ込んでしまったのだった……。