「なんだったの……?」


壁に近づき、手の平で触れてみる。


しかしそれはなんの変哲もないただの壁だった。


指先で触れただけで崩れるようなものじゃない。


「俺たち、この壁の向こうにいたよな?」


後ろから紀人にそう言われてあたしは頷いた。


「そうだよね? ドアの向こうが部屋になってて、女の子が……」


そこまで言い、亜美は身震いをした。


「みんなも、そうだよね?」


あたしは他のメンバーへ向けてそう聞いた。


全員、いっせいに頷く。


「じゃあ、夢じゃなかったんだ……」


この壁の向こうには確かに部屋があった。


そして、両目が空洞になった少女がいた……。