☆☆☆

目が覚めた時、甘い香りが漂っていた。


「ん……」


周囲を確認すると眩しい蛍光灯が視界にはいり、目を細める。


床は冷たくいけれど、気温は高いのが理解できた。


そして徐々に覚醒して行ったとき、自分が調理室にいるのだと気が付いた。


「あれ……?」


上半身を起こして確認してみると杏美や愛奈も同じように床に寝転んでいる。


男子たちもだ。


「うおっ!?」


そう声を上げて飛び起きたのは元浩だった。


勢いよく飛び起きた元浩はその場に立ち尽くしてキョトンとしている。


「なに……?」


杏美たちも起き始めて混乱している様子だ。


あたしはまだボーっとしている頭のまま立ち上がり、全員の無事を確認した。


そして、あの壁へと視線を向ける。


壁は崩れておらず、見慣れた景色が広がっている。