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それから5分ほど経過して、先生が戻って来た。


手には封筒を持っている。


「これよ」


そう言い、封筒から取り出した見取り図を広いテーブルの上に広げる。


「ここが調理室」


先生が指さしてくれた場所を確認すると、確かに調理室だ。


しかし、その壁の奥が黒く塗られているのがわかった。


「この場所はなんですか? 表から見ても、なにもないみたいですけど」


紀人が言う。


「そこが、私やあなたたちが見た部屋になるの。表から見ても確かになにもない壁が広がっているだけ。だけど確かにそこに空間が存在しているみたいなの」


「亜香里ちゃんの部屋……」


杏美が小さな声で呟いた。


「屋敷は取り壊されたのに、どうして亜香里ちゃんの部屋だけ残されたんですか?」


広貴がそう質問するが、先生は左右に首を振った。


「さすがにそこまではわからなかった。あまり調べていると、頭がおかしくなったと思われるかもしれないと思って、調べられなかったの」