「俺たちもそのドアを見ました」


「やっぱり……」


元々何か感づいていたのだろう、先生は呟くように言った。


「それで、ドアの中に入ってしまいました」


「冗談でしょう?」


「本当です。ここにいる全員で、ドアを開けました」


あたしは広貴の言葉のあとをついで、そう言い切った。


その後、あたしたちが経験している奇妙な出来事もすべて説明した。


先生は唖然とした表情を浮かべ、「信じられない」と、何度も繰り返し言った。


だけどこれは事実なのだ。


信じられないことが、この学校で実際に起こっている。


「あなたたちだけで宝来家の事情までたどり着いたのはすごいことよ」


先生は何度か頷いてそう言い、突然立ち上がった。


「実はあの後、自分が見たものが幻だなんて思えなくて、この学校について私も調べたの」


「調べたって、どこまでですか?」


広貴の質問に「簡単なところまでよ。見取り図を出して来て確認しただけ」と、答える。


「今、その見取り図を持って来てあげるから、少し待っててね」


先生はそう言うと大急ぎで調理室を出たのだった。