まさか、同じ目にあった人がいるなんて思っていなかった。


あたしは先生の話を聞きながら、知らない間に拳を握りしめていて汗が滲んでいた。


手からフッと力を抜いて深呼吸する。


「その後、先生はどうしたんですか?」


乾いた喉でそう質問すると、先生は「すぐの他の先生を呼びに行ったわ」と、答えた。


この学校に来たばかりでとんでもない物を見てしまったのだから、ほっとくわけにはいかなかっただろう。


「他の先生をつれてここへ戻ってきたとき、壁は元通りになっていた」


「え……?」


あたしは目を見開いて先生を見つめた。


「ドアがなくなっていたんですか?」


「そうよ。いくら説明しても信じてもらえなくて、結局私の思い違いだったってことになってしまったけれど……。ドアは確かにあったのよ」


先生は真剣な表情でそう言った。