「先生、もしかしてその奥になにがあるか知ってるんじゃないですか?」


思い切って質問してみると、先生が怯えた表情で振り向いた。


その目は挙動不審にうろついている。


「あなたたちは、なにかを見たの?」


質問を質問で返すということは、ひどく動揺しているということだろう。


「見ました。壁のシミと、それから……」


「壁が崩れ落ちた?」


途中で言葉を遮り、先生が言った。


あたしは目を見開いて先生を見つめる。


「知ってたんですか!?」


食いついたのは紀人だった。


腕の骨折のことも忘れて必死になっている。


「あなたたちも、見たのね?」


「そうです。それで今、巻き込まれてるんです!」


杏美が早口に言う。


それを聞いた先生は眉間にシワを寄せた。


「巻き込まれる? 一体なんのこと?」