「これ、本当に起こったできごとなのか……?」


広貴が日記帳を持ったまま立ち尽くしている。


「わからない」


あたしは左右に首を振った。


恐ろしく長く、鮮明に書かれた日記は確かに亜香里ちゃんの文字だった。


あたしは空になっているベッドへ視線を向けた。


本当に10歳の亜香里ちゃんの身に起きた出来事なんだろうか?


両親からないがしろにされた子が作り上げた、嘘の話じゃないだろうか?


それにしては、詳しく書かれ過ぎている気もするけれど……。


わからなくて、あたしは左右に首を振った。


「洋司君は亜香里ちゃんにとりついたまま死んだ。だから、この部屋に出て来る亜香里ちゃんの中にも洋司君はまだいるってことになるな」


広貴の言葉にあたしは頷いた。


だから、亜香里ちゃんの目から黒い水が流れるのだ。


「それなら、亜香里ちゃんを成仏させてあげれば、洋司君も一緒に成仏できるんじゃない?」


愛奈が閃いたように言った。