だけどあたしは何も言わなかった。


洋司が体の中にいるなんて言えば、今度は誰もあたしの面倒を見てくれなくなるかもしれない。


この家から出て行かされるかもしれない。


ロクに動き回れないあたしは、それだけはどうしても避けたかった。


『最後にはお姉ちゃんは石になるんだ』


ある日、洋司は歌うように言った。


「石?」


『そうだよ。硬くて冷たい石なんだ。だけど意識だけは残り続ける』


あたしのお腹から、また皮膚が剥がれ落ちた。


石になったまま生き続けるなんて、とても苦しくて辛いことだろう。


「助けてほしい」


あたしは初めて、洋司へ向けてこんな言葉を使ったと思う。


体の中に入り込んでもなお、洋司はあたしの弟だった。


呪をかけられても、あたしはいつまでもお姉ちゃんだった。


だから、弱音は聞かせて来なかったのだ。