その手は簡単に包み込めてしまうほど小さくて、柔らかい。


ずっと触れていたくなるようなフワフワ感だった。


「亜香里、なにしてる!」


もうすぐであたしの部屋に到着するという寸前、後ろから低い声が聞こえてきてあたしは立ち止まった。


洋司がキョトンとした顔をこちらへ向けているが、足がすくんで前に動かない。


全身からスッと血の気が引いていくのがわかった。


「洋司と……遊ぼうと思って」


精いっぱい笑みを張り付けて、振り向いた。


そこに立っていたのは父親だった。


父親は仁王立ちをし、あたしを睨み付けている。


それだけであたしの体は小さくなってしまう。


「洋司は女の子と一緒に遊んだりしない」


父親はそう言うと、洋司を抱きしめるようにして自分の元へ引き寄せた。


あたし達の手は簡単に離された。


「でも、洋司も遊びたがってるし……」


モジモジしながら抵抗すると、「遊ぶなら1人で遊びなさい」と、言葉をかき消されてしまった。