まだ学校にいる先生だっているはず。
そう、きっと先生だ。
先生だったらいい。
…でもどうして…先生がこんな暗闇の中、走ってるの……?
ふつう電気つけたりするよね……?
一度そう思ってしまえば、もう何度大丈夫と唱えても、効果がなくなってしまった。
ひぇ…お願いだから…こっちに来ないで…
その願いは届くことなく、足音はどんどん大きくなっていく。
_タッタッタッ
もうだめ…
怖さのあまり、耳をふさいで、廊下にしゃがみこんでしまった。
ギュッと目を閉じたとき、ずっと聞こえていた足音が、なぜかピタリと止まった。
「っ……」
え…止まった…
しかも私の近くでっ
今は絶対に目を開けちゃだめだと思った。
いま目を開けたら、目があっちゃいけないものと目があってしまう。
やだやだ…はやく通り過ぎて……
__「え、心粋さん?」
私の名前を呼ぶ声が頭上から降ってきた。
怖さのあまり、幻聴が聞こえたんだと思った。
だってそんなはずない。
晴日くんが、私に話しかけているなんて。
晴日くんが、私の名前を呼んだなんて。
「……大丈夫?」
信じられるわけが、ない。
でも私は、この声をよく知っている。だからきっと、間違いではない。
ここに、晴日くんがいるってこと。
ゆっくりと顔を上げれば、そこには今までで一番近い距離にいる晴日くんが、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。



