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小説を1冊読み終わって、固まった体をほぐすように、ぐーっと伸びをした。
ふと、カーテンの隙間から窓の外を見れば、もう空は暗い色をしていた。
「……もうこんな時間か…」
本を読むと時間を忘れてしまうのが、私の悪いところ。
学校はシーンとしていて、部活をしている人達の声も聞こえない。
一気に不安になった私は、慌てて時計に視線を向けた。
…もうすぐ18時
うーん…もうそろそろ帰ろう。
もし朝美先生に見つかったら、はやく帰らないと!って心配されそう。
ふぅ、と小さく息を吐いて席を立った時、コツンッと、なにかが窓にあたる音が聞こえた。
…ん?
コツンッ…コツンッ………ザァァ_
やがてそれは大きな音へと代わる。
この音の正体にはもう気づいている。
それでも、ゆっくりカーテンの隙間から外の様子を覗いた。
「……傘…持ってきてないのに」
窓にはたくさんの水滴がついて、白くくもっていた。
帰ろうとしたタイミングで雨が降るなんて、ついてない。
もしかして…すぐやんだりする…?
勢いのある雨の音に負けて、また椅子に座ってしまった。
…別に早く帰る理由もないし、朝美先生にバレなきゃいいんだし…
我ながら、今は悪い子だと思う。
19時くらいなら…先生達もまだたくさん職員室にいるだろうし、もうちょっとここにいよう。
いいよね…うん、いいんだ…
勝手に納得した私は、意味もなく、机にだらんと体重をあずける。
そして、そっと目をとじた。
窓越しに聞く雨の音は、小さくて心地がいい。
…ここが家ならもう寝てる…
そう思っていたのはちゃんと覚えていて、
それに、ちゃんと19時には帰るつもりだった。
なのに……
気がつくと時計の針が20時40分をさしているんだから、人生は難しい。
「へ………へ?!」
「20時40分?!」



